小池くんはインターネット上に溢れるAIで自動生成された画像を閲覧しながら感心していた。
Diffusion Modelが完全なノイズから徐々にノイズを除去していき新たなデータを生成する過程が、対話式イグニッション法における、混沌とした情念が他人との関わり合いの中でスポットライトが当てられある瞬間における信念が沸き立つ過程と近似している。
SNSや飲み会で交流するだけが他人に対する興味ではない
「なるほど。僕、思い出したのですが、師となる人が要所要所でいたんですよね。尊敬する人、憧れの人と言ってもいいですが。幼少期は近所のお兄さん、青年期は家庭教師の人、大学時代はサークルの先輩」
小池くんが言った。
「だからスキルを向上させるために重要なことは、自分の時間をいかに確保するかだと今でも思っていますが、考え方含めた幅広い意味でのセンスは誰かに鍛えてもらったような気がします。手取り足取り直接指導されたということではなくても」
「なるほど。そして社会人になった小池には師となる人はいるのか」
渡辺くんが聞いた。
「難しいな。篠田さんは師というより友達だし」
「それはおかしくないか」
私はできるだけ好意的に受け止めようと努めた。
「真面目にいうと渡辺にだって自分はいい意味でのライバル意識があり、それがモチベーションになっているからな。だ、だだだからわわわ渡辺も俺にとってまあ」
「そこで、どもらないでくれ。つまり小池は非常に他人に興味あるよな、もはや。SNSや飲み会で交流するだけが他人に対する興味ではないだろう」
小池くんと渡辺くんのやりとりを聞いていた私はふとスマホの時刻を見てため息をついた。
「残念ながら本日の終電はなくなったようだ。ここから我々の最寄り駅まで3時間歩けば着ける。タクシーは甘え、なあそうだろ、みんな」
「噓だろ」
「またいつものパターンか」
薄暗い道のりを我々は黙々とただ一緒に歩いていく。