2022年の紛争死者数、今世紀最悪に ウクライナ戦争などで激増

ウクライナの首都キーウで、戦死した兵士の亡きがらに最後の別れを告げる人たち(2023年6月28日撮影、Oleksandr Gusev/Global Images Ukraine via Getty Images)

オーストラリアのシンクタンク「経済平和研究所(IEP)」が28日公表した最新の「世界平和度指数」によると、2022年に世界全体で紛争によって死亡した人の数は約23万8000人と前年からほぼ倍増し、今世紀に入ってから最悪を記録した。死者の増加は同年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻と、エチオピア北部で2年にわたって続いた政府と反政府勢力の戦闘が主な原因だ。

死者数は、スウェーデンのウプサラ大学が運営する「ウプサラ紛争データプログラム(UCDP)」による調査に基づいている。UCDPによると、組織的な暴力による2021年の死者は推定約12万1000人だった。2022年はそれより96%も増え、80万人以上が犠牲になったルワンダ大虐殺が起きた1994年以降で最多に膨らんだ。

死者の大部分はウクライナ(8万3000人)とエチオピア(10万7000人)で生じた。両紛争は、国家が関与する紛争としては冷戦終結以降で最多の死者を出している。エチオピアでは2020年11月、アビー政権の連邦政府軍と、北部ティグレ州を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)との内戦が勃発。2022年11月に停戦で合意するまで激しい暴力の応酬が続いた。

このほか、マリやミャンマーでも政情不安が続いている。

世界の半分の国が紛争に関与

2023年版世界平和度指数によると、調査した163カ国・地域のうち、半数を超える91がなんらかの形で対外的な紛争に関わったり巻き込まれたりしている。この数は2008年時点の58から増加。うち47では、2022年中に紛争で少なくとも1人の犠牲者が出ている。

紛争の数もじわじわと増えている。UCDPによると、2022年には国家の関与する継続中の武力紛争が55件あり、前年から1つ増えた。うち8つは戦争のレベルに達しており、22は国際的な紛争(当事国の一方もしくは両方が別の国から軍事支援を受けている状態)に発展している。

エチオピアやウクライナ、ミャンマー、イスラエル、南アフリカを含む79カ国・地域は同年中に紛争が悪化し、84カ国・地域は改善している。

最も平和な国は?

2022年に紛争が世界経済に与えた影響額は前年比17%増の17兆5000億ドル(約2530兆円)と推定されている。これは世界全体の国内総生産(GDP)の13%に相当し、1人あたりおよそ2200ドル(約32万円)のコストを負った計算になる。増加は主に、ロシアのウクライナ侵攻を受けて関係国が軍事費などを増やしたことによるものだ。

最も平和な国にはアイスランドが選ばれた。アイスランドは2008年以来首位を保っている。以下、デンマーク、アイルランド、ニュージーランド、オーストリアと続いた。(編集注:日本は前年と同じ9位)

最も平和でない国とされたのは引き続きアフガニスタンだった。ただ、2022年には改善もみられた。アフガニスタンでのテロ事案は前年から75%減り、テロによる死者は58%減った。テロを含む紛争関連の死者は前年は4万3000人近くにのぼっていたが、2022年は4000人あまりと10分の1に減った。

ワーストはこれにイエメン、シリア、南スーダン、コンゴ民主共和国が続いている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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