──3年前、パンデミックと丸かぶりしてしまっているのですね。それは不運なタイミングでした。
本当に……ただ、それをきっかけに外より内へ、国内に目を向け続けた3年間となりました。売上としても、旅に行けない代わりに地方の美味しいものをおうちで食べたい、というニーズが増えたことで、悪くはなかったんです。
ただ、ビジネスモデルとしては食品物販は粗利が低く、スケールしないと成立しないというのが積年の課題でした。そこで食品販売業で経験値の高い「丸の内キャピタル」社とタッグを組み、22年4月にジョイントカンパニー「AKOMEYA TOKYO」として再スタートを切りました。
──国内に目を向けて、見えてきたのはどんなことでしょうか?
前述したとおり、この事業はスケールしないと事業として成立しないので、新会社には迅速な成長が求められています。一方で、ビジネスサイズの拡大ばかり追求すると、ブランドは希薄化しがちです。ブランドを希薄化させずに、スケールするためには、みんなが「ここにいる理由」を明確に自覚して、みんなが強く成長を志向する、そんな組織に脱皮する必要があると考えました。
そうすれば“小さいまま大きくなる”ことができると。そんなことを考えている折に、アコメヤ事業がスタートをした2013年に、偶然にも「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを知りました。伝統的な食文化とは、日本人の「自然を尊び、調和する精神性」であり、その中心には「米」がある。そう考えると、「米を中心としたライフスタイルショップ」である「アコメヤ」というブランドにますますの将来性と発展性を感じました。
そして、この文脈を意識しつつ、改めて我々のミッションとビジョンを定義しなおしました。“小さいまま”あり続けるために「日本の食の可能性を拡げる」をミッションとして掲げ、すべての商品選定は、このミッションに資するかどうかを判断基準としています。
最近、伝統技法でつくる木桶の継承に取り組む「木桶職人復活プロジェクト」に河野酢味噌製造工場 と参画しましたが、これも我々のミッション&ビジョンにアラインしていると考えてこそ、です。