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2023.07.06 07:30

小さくても豊かに、日本の人口減少がAIの普及を促進する

日本の人口減少は、決して単なる可能性ではなく、経済的に深刻な影響を及ぼす恐れのある差し迫った現実です。日本の15歳から64歳までの労働力人口は、2050年までに2400万人減少すると試算され、人口全体の減少率を超える急激な減少が予測されています。

幸い政府も動きはじめ、移民の受け入れに対する規制緩和に積極的に取り組んでいます。実際、労働ビザや永住権の取得は以前と比べて、多くの人が思っている以上に簡単になっています。

しかし、言葉や文化の壁のせいで移民先としてのハードルが高いことや、他国と比べて報酬面での競争力が低下していることもあり、移民政策だけでこの差し迫った人口減少を相殺することは難しいでしょう。

人手不足の悪化は、日本にとって自動化を促進させる圧力にもなっています。そしてAIや、それによる自動化は、この人口減少圧力に対する非常に効果的な解決策になり得るのです。

加えて、日本にはロボティクスや自動化技術に長年取り組んできた歴史があることから、社会全体の自動化を実現するための土台も十分に整っています。ファナックや川崎重工業、ソニー、安川電機など、ロボット技術の最先端で活躍してきた代表的な企業が国内に多数存在するのです。

2020年の民間企業におけるロボット導入実績を見ても、日本の製造業では従業員1万人あたりにつき390台のロボットを導入しています。これは韓国やシンガポールに次いで3番目に多い導入率です。また、同年には日本のメーカーによるロボット生産数は17万4000台を超え、世界のロボット供給量の45%を占めています。

特に日本のGDPの75%を占める「サービス業」と「AI・ロボティクス」の融合は、革新的な変化を生み出すポテンシャルがあります。

近年、デジタル・トランスフォメーション(DX)という言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、それと同時に国内においてクラウドの導入が加速度的に進んでいます。AIはこの流れをさらに加速させ、自動化やロボットの活用を急速に促進させる効果をもたらすでしょう。

実際、人手不足が深刻化する中、すでに大小問わずあらゆる企業が競争力を維持しようと最先端技術の導入に取り組んでいます。小売店におけるセルフレジや、飲食店におけるタッチパネル式注文機の普及が良い例です。

このように「人口減少問題」と「AIや自動化により生産性が飛躍的に向上する時期」が運よく重なっているのが今の日本の状況です。これは1つの興味深いパラドックスにもなっていて、人口減少の時期と、国として以前ほど人口を必要としなくなる時期を「偶然」一致させられる可能性を示唆しています。

そして日本という国を1つの企業に例えるなら、人員の自然減が偶然にも自動化の発展時期と一致したことを逆手に、今後はこれまでの「危機のリスク」を進化や成長につながる「機会」に変えられるかもしれません。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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