BCP策定意向の企業が3年連続半数未満 コロナ拡大時ピークに優先度下げる傾向

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自然災害、テロ、システム障害など、企業が危機的状況に置かれた場合に事業を継続していくための計画、「事業継続計画(以下、BCP)」。近年、地震や豪雨、台風などの自然災害が頻繁に発生し、ウクライナ侵攻をはじめとする地政学リスクやサイバー攻撃などのリスクも付きまとうなか、企業にとって危機管理は不可欠なものとなっている。しかし、帝国データバンクが5月に全国2万7930社を対象に実施した調査では、ここ数年、BCPの策定意向を持つ企業の割合は、低下していることが分かった。

最初にBCPの策定状況を聞いたところ、「策定している」企業は18.4%という結果に。前回調査(2022年5月)から0.7ポイント増え、6年連続で増加したものの、「現在、策定中」(7.5%)、「策定を検討している」(22.7%)と答えた企業はそれぞれ前年比で0.1ポイント、1.9ポイント減少。BCP策定の意向がある企業は合計48.6%(前年比1.3ポイント減)にとどまり、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年をピークに、2021年から3年連続で5割に満たなかった。

企業規模別では、BCP策定率が大企業で35.5%(同1.8ポイント増)、中小企業で15.3%(同0.6ポイント増)。大企業では2016年から8ポイント上昇したものの、中小企業では3ポイントの上昇にとどまった。

BCP策定の意向がある企業に、事業継続が困難になると想定しているリスクを尋ねると、全体では地震や風水害などの「自然災害」が7割超(71.8%)で最も多く、「設備の故障」(41.6%)が続いた。「感染症」(40.4%)については、新型コロナウィルスの5類以降に伴い、前回調査から13.1ポイント低下。一方で、5月には全国で震度5弱以上の自震が6回発生するなど、昨今、強い地震が多く起きていることを受けて、「取引先の被災」(31.4%)、「物流(サプライチェーン)の混乱」(34.7%)が上昇した。

さらに、事業が中断するリスクに備えて実施または検討している内容を聞くと、全体では最多が「従業員の安否確認手段の整備」(68.2%)となり、次いで「情報システムのバックアップ」(57.1%)、「緊急時の指揮・命令系統の構築」(41%)の順に。

帝国データバンクは、「大企業では従業員の安否確認や情報システムの管理などの備えを重視し、中小企業では『調達先・仕入先の分散』や『代替生産先・仕入先・業務委託先・販売場所の確保』などのサプライチェーンに関する備えが大企業と比べて高かった」と分析した。

BCPを「策定していない」理由については、最も多かったのが「策定に必要なスキル・ノウハウがない」で42%。それに策定する「人材を確保できない」(30.8%)、「時間を確保できない」(26.8%)が続いた。企業規模別では、大企業では「策定する人材を確保できない」(36.4%)などリソース不足を理由にあげる企業が中小企業と比ベて多く、中小企業ではそもそもBCP策定の「必要性を感じない」(21.6%)割合が、大企業を7.2ポイントも上回った。

帝国データバンクは、「ポストコロナに向けて経済活動が加速していくなか、BCP策定への取組みに対する意識や優先順位が下がる傾向がある。しかし、BCPの準備を怠ることで経済活動に与えるマイナスの影響は大きく、企業、行政が連携して対策を講じていくことが求められよう」と総括した。

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Forbes JAPAN Web編集部

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