それを受け、人的資本の開示を進める企業が増えているが、経営コンサルティングを手がけるリンクアンドモチベーションは4月、国内機関投資家を対象に、人的資本開示に関する意識調査を実施(有効回答数:100)。結果からは、機関投資家たちの人的資本開示への満足度や求めるものが明らかになった。
最初に今回、人的資本の開示が義務化されたことへの評価を尋ねると、ポジティブに捉えている機関投資家は、半数超(54%)に。また、開示状況についての満足度については、「満足」の回答が計39%に上り、昨年(2022年調査・29%)を10ポイント上回った。
さらに、「人的資本は企業成長に影響を与えている」と考える機関投資家は86%に。投資判断に人的資本がどれくらい影響しているかを聞くと、「影響する」と答えた割合は計76%に上った。同割合は昨年より7ポイント増加し、人的資本経営が実践され始めたなか、機関投資家の関心が高まっていることが見て取れる。
続いて、人的資本の開示状況の参考にしているフレームワークについては、最多が「特にない」で39%。リンクアンドモチベーションはその結果を踏まえ、「機関投資家がルールやガイドラインに則った開示を特別期待しているわけではないことが推察される」と説明した。
また、機関投資家が開示が必要だと考える人的資本の項目については、「ダイバーシティ」が50%で昨年に引き続き最多となり、続いて「生産性」(43%)、「スキルと能力」(41%)の順に。同社は、昨年(2022年)は開示項目として「コスト」(46%)が「ダイバーシティ」(51%)に次いで必要とされていたが、今年は「コスト」に対する期待度が39%と相対的に低下。一方で、「生産性」開示への期待は依然、高いことから、「企業の投資結果」に対する機関投資家の注目度が上がっている様子がうかがえると考察した。
他にも、人的資本の可視化に向けた企業の動きとして重要視していることを尋ねると、「トップのコミットメント」(52%)が最も多く、中でも「経営層からのメッセージ」を最重要視(53%)していることが明らかに。
同社は企業の人的資本開示について、「表面的な開示にとどまっているケースも多い。加えて自社の人的資本が、未来の企業価値向上にどのように結びつくかという道筋を示せている企業は少ない」と課題を指摘。
今回の調査から、機関投資家は企業に人的資本への投資による「未来」と、ルールやガイドラインだけに縛られていない「ストーリー」を求めていることが分かったとし、企業が人的資本の開示を進める際には、「未来の企業価値にいかにインパクトするかをストーリーにして、機関投資家と対話をすることが重要だと言えるだろう」と提言した。
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