NASAの火星滞在実験が始動、4人を1年間「隔離状態」に

火星砂漠研究ステーション(ユタ州ハンクスビル・2018年8月)(IrinaK / Shutterstock.com)

米航空宇宙局(NASA)は6月25日、火星での長期滞在をシミュレートするための実験施設に、4人のボランティア被験者たちを送り込んだ。彼らは、約1年間の間、広さ約160平方メートルの3Dプリンター製の建物の中で暮らすことになる。

このミッションは「乗組員の健康およびパフォーマンス探査研究(CHAPEA)」と呼ばれるもので、被験者らは378日間、宇宙遊泳のシミュレーションやリソースの制限、通信の遅れ、機器の故障といった実際の火星ミッションの課題を体験する。

今回の参加メンバーには、カナダ人の生物学者のケリー・ハストンをはじめとする科学者やエンジニア、医師、米海軍の微生物学者が含まれている。NASAは、2025年と2026年にもCHAPEAミッションの実施を予定している。

居住施設には、プライベートな区画や2つのバスルーム、ジムやレクリエーション室、作業用の専用エリアが設けられている。

CHAPEAミッションは2021年8月に発表され、NASAはその後、応募者からクルーを選定した。NASAは現在、アルテミス計画で初の女性と初の非白人の宇宙飛行士を月面に着陸させようとしており、その次のステップで火星に人類を送り込もうとしている。

何十年もの間、NASAは火星を調査し、無人探査機を送り込んで生命の痕跡を探してきた。しかし、人類を火星に送り込み、調査を行うミッションには1年以上かかる可能性があり、専門家は、地球から離れて長期間過ごす乗組員に多くの課題が生じる可能性を指摘している。

NASAは、これまで南極大陸や大西洋の海底などで、火星を模倣した実験を行ってきたが、その多くはCHAPEAよりも短い期間のものだった。

「このような長い期間のシミュレーションは、我々にとって火星をより身近なものにしてくれる」とNASAのエンジニアリングディレクターのジュリー・クレイマー=ホワイトは述べている。「このような長期ミッションで直面する問題や課題に対処することで、火星が私たちの手の届くところにあることが実感できる」と彼は続けた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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