音声は「キャラクターの見た目にマッチ」にこだわる
次には、生徒のやる気を維持することだ。Duolingo社独自の音声活用技術を用いて、登場キャラクターの見た目にマッチした音声を生成したほか、Push通知にもAIを活用したという。生徒に的確なコンテンツを的確なタイミングで送ることで、「また勉強したい」と思う気持ちを維持する。UIのポップさ、競争心の喚起
Bicknell氏の話を聞き、筆者は他にも、アプリを開いた際のUIのポップさや他のユーザーと競う形で学習の進捗を確かめられる学習体験も、学習意欲を保つための秘訣たり得ると感じた。Duoliingoはまた、「生徒が何を考えているのか理解する」上でもAIを活用しており、独自学習モデル「Birdbrain」を活用している。
半減期回帰(HLR)モデル
Duolingoでは、数百万人のエラーパターンを学習する「半減期回帰(HLR)モデル」を実装した。1レッスン終了後の記憶能力をMAXと仮定し、1ワードを覚えている能力の半減期を予見するものだ。この学習モデルでは、生徒が「もう一度学習すべきワード」を見つけ、生徒にとって最適な出題タイミングを予見する。
会場では、Duolingoが開発したこの「HLRモデル」が具体的には学習においてどう有用かが、比較テストの結果によって説明された。
まず、HLRモデルとすでに確立されている機械学習モデルの予見エラーの比較では、HLRモデルの方が、予見エラーが低い結果になった。
次に、コントロール群を用いてABテストを行った結果では、HLRモデル対照群の場合は、実際の練習問題におけるリテンションレートが9.5%高く、レッスンにおけるリテンションレートも7%高い結果となり、全体におけるアクティビティも12%改善されたという。
この結果から、HLRモデルはたしかに、学習者の「やる気維持」に有効であるらしい。
次に、2年の歳月をかけて開発され、2020年に発表された「Birdbrain バージョン1.0」についての説明があった。
「最近接領域」に馴染む問題を。「Birdbrain バージョン1.0」
Birdbrainは、「最近接領域」を応用した機械学習だ。人が新しいものを学習する際、「発達の最近接領域」が存在するが、これには下記3つの階層があるという。
1.努力しなくても理解できる領域(自分だけで学習できる)
2.努力さえすれば、身につけられる領域(発達の最近接領域)
3.あまりにも難しすぎて努力しても理解できない領域
人にとっては「発達の最近接領域」の問題が最もチャレンジングだが、これは逆に学習のモチベーションも上げ得る。そのことからDuolingoは、2.の「領域に合った質問」を最も豊富にレッスン内容に盛り込みたいと考え、「Birdbrain」を開発したという。
その結果、問題の正解率が99%だとあまりにもつまらなく、50%だと難しすぎてやる気を損なうが、ちょうど中間の、生徒が最もやる気を維持しながら学習できる「最近接領域に馴染む問題」を出すことができるようになった。