経済・社会

2023.06.25 08:00

日米がトマホークを巡り、突貫工事で調整中 このまま議論なしに突っ込んで良いのか

Andy Gin / Shutterstock.com

防衛費増額のための財源確保法が、16日の参議院本会議で可決、成立した。国会は21日、会期末を迎えた。台湾有事もにらんだ防衛力強化が大きな争点だったはずだが、政府が昨年末に決めた国家安全保障戦略など戦略3文書をなぞるような議論ばかりが目立った。「2027年までに、中国による台湾侵攻の可能性」などが喧伝されるなか、外務・防衛の官僚たちは国会を横目に、どのような作業に汗を流していたのか。

官僚の一人は「(米国製巡航ミサイルの)トマホークですよ」と語る。「今年度予算(の約2113億円)で、米国から(400発を)一括購入しなきゃいけません。もう、全然時間が足りません」と言う。日米両政府の外務・防衛官僚たちが連日、頭を突き合わせ、どんなトマホークを買うのか、買ったらどう使うのか、使った後はどうするのか、などの議論を繰り広げているという。

この話を、陸上自衛隊の松村五郎元東北方面総監にすると、「それはそうでしょう。どう考えても時間が足りません」という答えが返ってきた。松村氏によれば、装備の導入の検討開始から決定まで普通5年、さらに装備の製作・配備まで5年で、計10年かかることがざらにあるという。

トマホークの場合、2026年度から自衛隊各部隊への配備が検討されている。海自のイージス艦8隻も27年度までに改修し、トマホークを搭載できるようにするという。一昨年秋から国家安保戦略の議論が本格化したことを考えると、トマホークの導入検討から配備まで、通常かかる期間の半分の5年しかない。また、トマホーク「役に立つか立たないか論争」に見える日本の課題で書いたように、日本政府が正式に反撃能力の採用を決めたのは昨年12月16日。それに先立つ政府内の議論のなかで、反撃能力の柱として、「そうだ、トマホークがあるじゃないか」といった「半ば思いつき」(関係者)によって導入が決まったという。「最初にトマホークありき」だから、調整が大変だろう。

松村氏は「武器を購入する場合、普通は、戦い方の検討から始めます。どのような戦いをするのかを検討し、その戦い方に合った必要な装備を考えます。建物のような固定的な目標を狙うのか、車両や艦艇のように移動する目標を狙うのか、コンクリート製の建物などを破壊できる能力が必要なのか、空中で爆発させて広い範囲を制圧するのか、命中精度はどのくらい必要なのか、など考える点はたくさんあります。全てを満たす装備を考え、そのうえで費用対効果も考えます」と語る。

防衛省は新聞赤旗の取材に対し、日本政府が購入するトマホークについて「取得を進めているトマホークは最新型のブロックVで、対地攻撃用となる」と回答したという。政府としては、反撃能力が認められた以上、地上施設を狙うことも可能だという論法なのだろう。トマホーク・ブロックVの射程は1600キロ以上とされる。南西諸島からでも九州からでも中国沿岸部に届く距離だ。イージス艦に搭載する作業を行うため、少なくとも水上発射型を想定していることになるが、地上発射も考えるのかもしれない。
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文=牧野愛博

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