でも、そんなことを南西諸島に住む人々は受け入れるだろうか。「自衛隊の基地があるから、戦争を招く」という論法には無理があるが、平素から攻撃できる態勢を維持しておくということは、危機に際して真っ先に攻撃される可能性があるということでもある。松村氏は「戦力展開というワンクッションを置くことで、得られる戦略的な安定性もあるのです」と語る。
一方、米国は2019年に失効したINF(中距離核ミサイル全廃条約)が禁じていた、射程500~5500キロの地上発射型ミサイルの開発・配備を急いでいる。松村氏は「米国としては、日本への配備が難しいなら、日本に保有して欲しいという思惑もあるでしょう」と語る。そうなると、トマホークはイージス艦搭載型だけではなく、地上発射型も保有することになるかもしれない。
松村氏は「日本が中国とミサイルの撃ち合いをすれば、物量でかなわないうえに、土地が狭く目標が密集している日本が圧倒的に不利で、多くの被害が出ます。そうならないためには、台湾有事の抑止という観点ばかりでなく、事態がどのように推移しても日本領域への攻撃をさせないためにどうするかという視点も重要です」とも話す。
トマホークの具体的な性能や戦術については、軍事上の機密事項だから、それを国会で明らかにしようとしても無理があるだろう。でも、「日米の一体化がどこまで信用できるのか」「台湾有事の際、米国は本当に台湾に軍事介入するのか」といった議論はできたはずだ。
政府も本来、米国がいざという時に日本を置き去りにしないよう、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定を進めるべきだ。先の関係者はこうぼやいていた。「トマホークで忙しすぎて、ガイドラインまで手が回らないんですよ」。これを本末転倒と取るのか、やむを得ないと考えるべきなのか。日本にとって厳しい状況が続いていることだけは間違いない。
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