ジェシカ・ラングが、有名女優であり、クレアの母親であるドロシー・クインキャノンを演じる(c)2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films
死亡したとされるニコは、彼も出入りしていたコルバタ・クラブ前の路上で事故に遭っていた。クラブは街の有力者や名士たちが集まる場所で、マーロウは事故現場にも立ち会ったという支配人に話を聞くが、彼は「遺体は自分とニコの妹が確認した」と取り付く島もなかった。
マーロウは、さらに手かがりを得るためニコの自宅を訪れるが、そこで偶然にも彼の妹、リン・ピーターソン(ダニエラ・メルシオール)に遭遇する。しかし、直後に彼女を追ってきたと思われる2人組に襲われ、意識を失ってしまう。
気がつくと、眼の前にセドリックというアフリカ系アメリカ人の運転手が立っており、彼に拉致されるように実業家ルー・ヘンドリックスに引き合わされる。そしてルーもマーロウに「ニコを探し当てたら謝礼を支払う」と持ちかけるのだった。
フィリップ・マーロウが活躍する小説は基本的には彼の一人称で語られるのだが、映画でも主人公マーロウの視点で、失踪した人物を追うかたちで物語が進行していく。そして、死亡したとされる人物の周囲に広がる深い闇へと足を踏み入れていくのだ。
登場人物の関係が錯綜して、ともすれば物語を追うのが困難な場合もあるが、あくまでもマーロウになりきって観ていけば、入り組んだ展開のなかでも「迷子」になることも少ないと思われる。
よりジェントルな私立探偵
これまでフィリップ・マーロウは数々の名優たちによって演じられてきた。「三つ数えろ」(1946年)のハンフリー・ボガード、「ロング・グッドバイ」(1973年)のエリオット・グールド、「さらば愛しき女よ」(1975年)のロバート・ミッチャムなどだが、今回の「探偵マーロウ」で演じるのは70歳を超えたリーアム・ニーソンだ。フィリップ・マーロウの原作での年齢設定は、およそ30代から40代だと言われている。それに比べるとリーアム・ニーソンの年齢は明らかに従来のマーロウ像を刷新するものとなっている。作品中でも「私も年だな」とタフガイとは思えぬセリフも聞かれる。
リーアム・ニーソンはこれまでにないフィリップ・マーロウ像を演じている(c)2022 Parallel Films (Marlowe)Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films