スキルの共通言語化が「革命」を生む
──「仕事や組織の未来」はどのようなものだと思うか。ザヒディ:まず、これからの仕事にはバーチャルワークやハイブリッドワークが欠かせないものになる。第二に、先進国で起きている大量退職や働き方の質的変化によって労働者の交渉力が以前より増しているため、職場の質や賃金に注目が集まるようになるだろう。これは非常に重要なことだ。
第三に、グリーン・トランスフォーメーションは人々に多くの機会をもたらすと私は考えている。世界経済フォーラムは23年1月に、社会的雇用とグリーン雇用に焦点を当てた「明日の仕事」についてのレポートを発表した。そのなかでは、わずか10の経済圏だけで1200万もの新しいグリーン雇用が必要だとしている。環境に配慮した仕事には、大きな雇用創出のチャンスがあるのだ。
一方で、石油や石炭、ガス業界で働いている人たちが、自分たちのアイデンティティや職業の核となるものを失い、これまでとは異なる仕事に就かなければならなくなるという事実は軽視できない。彼ら彼女たちが尊厳をもって、新たな仕事に移行できるようサポートすることにも重点を置く必要がある。
──OECD(経済協力開発機構)は、今後10年間で11億人分の仕事がテクノロジーによって激変する可能性があると見積もっている。日本ではリスキリングに力を入れる大企業も見られるが、どのようなリスキリングが必要だと思うか。
ザヒディ:リスキリングの具体的な内容は、その人の状況に応じてカスタマイズする必要がある。
あえて3つのコア領域を挙げるとすれば、ひとつは「3Dデジタル」だ。ヘルスケアにおけるデジタル技術の活用なのか、IT分野におけるデジタル技術なのかなどによっても意味合いは大きく異なるが、一般的にデジタル技術のリスキリングとスキルアップは重要だ。
ふたつめの要素は「ソーシャル・スキル」だ。人々がお互いにどのように交流し、どのように協力し合うかなどが含まれる。そして3つめが「個人の能力開発」だ。クリティカル・シンキング(批判的思考)、アクティブ・リスニング、リーダーシップに関するスキルなど、自己啓発に欠かせない要素がすべて含まれる。このようなソフトな要素に加えて、職業ごとに特有のスキルも身につける必要がある。