ヘルスケア

2023.06.09 14:00

人工皮膚技術の進歩が実現する失われた「触覚の回復」

高電圧問題を解決するために、研究者たちは、3層構造の絶縁体を開発してe-skinに追加した。この絶縁体は滑らかで薄いため、e-skinは簡単に着用でき、柔軟性も保たれる。

e-skinの最大の難点は、外部にある物体との接触を検知することではなく、その感覚を脳が解釈してそれに対して反応することにある。通常は、火傷しそうなほど熱いものに触れると、脳はすぐに危険を察知し、無意識のうちに瞬時に体を引く。これが感覚フィードバックだ。皮膚と脳をつなぐ神経ネットワークによって、我々は、意識して考えるよりも速く触覚に反応できる。人工皮膚では、この感覚フィードバックの仕組みを再構築しなければならない。

何かに触れると、アナログ信号が電気信号に変換され、神経を通じて脳に伝わる。e-skinでは研究者たちは半導体を使ったシナプス的トランジスタのネットワークを構築し、電気信号を伝えることにした。

ワンらは、生きたラットをモデルにして、e-skinと体性感覚野(somatosensory cortex:体性感覚を処理する脳領域)をつなぐ閉ループシステムを開発した。体性感覚野は運動野に近接し、すばやく運動反応ができるように助けている。生体内(in vivo)実験では、e-skinに圧力をかけると体性感覚野が著しく活性化し、その結果、ラットの筋肉がかなり活性化することが確認された。

ワンらのe-skin技術は、動物や人でのテストを何度も繰り返して安全性と有効性を確認した後で、さまざまな用途に応用できる可能性がある。何よりも、米国だけで200万人近くいる四肢切断患者や、触覚に影響を与える病気や先天的条件のあるすべての人の触覚を、再生的に回復させる可能性がある。

さらにe-skinは、産業分野でも利用できる可能性がある。人間が操作する機械に適用して操作性を向上させたり、ロボットに適用してそこからデータを受け取り、よりうまく操作することなどが考えられる。

e-skinが商品化されて普及するには、少なくともあと数年はかかるだろう。しかし、ロボット工学や人工知能、重要な再生技術などの急速な発展により、e-skinや同様の技術の普及はすみやかに進むはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=ガリレオ

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