アメリカは分業制になっていて、スポーツ選手でもチャリティー専門のエージェントやプライバシー専門のエージェントをつけています。そうすることで、その人が稼いだお金が循環するのです。美容師やヘアメイクアップアーティストやスタイリストにもエージェントがいて、自分の作品や仕事の成果を預けておくと、どんどんアサインするのでフリーでもやっていけます。
20代でもエージェントをつけているので、若くてもお金にシビアでビジネスをわかっています。日本人は自己投資も社会投資も下手ですよね。だから貯金しとこう、みたいな社会環境になる。向こうは若い時からエージェントにお金を払って仕事をとってこさせる社会構造なので、最終的にトム・ハンクスまでいくのでしょうね。
中道:日本の美容業界にはエージェントみたいなものはないのですか。
朝吹:モデル事務所のようなところに所属するケースはありますが、転職や引き抜きは事務所から嫌がられます。アメリカはドライだから常に異動してエージェントも自分も頑張って上がっていくけれど、日本は異動するなら仕事は回さないとか、その辺が村社会っぽいですよね。
中道:たしかにそういうところはありますね。朝吹さんは美容業界にいながら、かなり幅広い活動をされていますが、今後についてどのようなイメージをお持ちですか。
朝吹:美容師の良いところはハサミと櫛と技術があれば、1人でも髪を切ることを仕事にできるところです。髪は必ず伸びるので、とりあえず食べていけます。
髪の毛を切っていると衛生感覚もあがります。ハサミにゴミがついて錆びたらいけないとか、そのうち殺菌しようとか。一方、髪を切られる方には心の変化が起きます。
ニューヨークでホームレス支援をしていたのですが、まず食事をあげて温まってもらい、その次に伸び放題の髪の毛を切って髭を剃ります。そうするとさっぱりして、もう1回人生にチャレンジしてみようかと意識が変わり、清掃員やるよとか警備員やるよと社会復帰できていくんです。
中道:すごいですね。髪を切ることがマインドを変えるスイッチになるのですね。食事やお金は渡したら終わりですけど、貧困の国の人に技術を身につけさせてあげれば、その先もずっと役に立ち続けますね。