少なくとも、そのための土台が整っているのは確かです。例えば、2022年はVC業界にとって世界的に「冬の時代」でしたが、そんな逆境にもかかわらず日本のスタートアップ界は前年をわずかに上回る8774億円を調達し、過去最高を更新するとともに1兆円の大台にまた一歩近づく成長を遂げています。
この成長の背景には、新たな国内VCファンドの増加があると考えられ、実際のところ過去3年間で新たなファンドの数は40%近くも増えています。
もちろん、全てが順風満帆というわけではありません。
特にシリーズD以降など、レイターステージのスタートアップにとって2022年の資金調達環境は厳しく、1社あたりの調達額は前年比で30%近く減少しています。これは海外VCからの資金調達額が前年比13%減になるなど、海外からの投資の減少が主な原因です。
現在においても東証グロース市場の株価は低迷し続け、IPO評価額も依然として減少傾向にあります。日本で資金調達を目指すスタートアップにとってますます厳しい環境になっていると言えるでしょう。
このように業界の障害となる要素もある一方で、今後の展望は明るいです。
2022年には岸田内閣がスタートアップの育成強化に向けて1兆円という異例の予算を確保し、国内スタートアップへの投資額を2027年度までに10倍の10兆円に増やす「スタートアップ育成5か年計画」を策定しています。同計画では100社以上の 「ユニコーン」を創出するという野心的な目標も掲げています。
この大胆な計画が、活性化が急速に進む国内のスタートアップ・エコシステムと合わされば、日本のベンチャーキャピタル投資にとって新たな時代の幕開けとなることが期待できます。
そして日本の市場に対する世界的な関心が今後も高まるにつれ、この「日出ずる国」で醸成されつつあるVC市場にも海外機関投資家の資金が徐々に振り向けられるようになるかもしれません。
連載:VCのインサイト
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