酒類業界がコロナ前の水準に急回復した背景とは

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コロナ禍、酒類業界はまん延防止等重点措置による飲食店の営業時間短縮や酒類の提供制限などの影響を受けて大きく需要が落ち込み、長らく冬の時代を迎えていた。しかし新型コロナウィルスの感染症上の位置付けが5類へと移行したことや行動制限が無くなったことなどを背景に、酒類業界では急速な回復傾向が見られる。

帝国データバンクは6月2日、新型コロナウィルス流行前(2019年1月)から現在(2023年4月)までの酒類業界(製造・卸売・小売・飲食)に絞った景気DI(※1)の動きについて、調査・分析した結果を発表した。期間中の酒類景気DI(酒場DI ※2)を見ると、1回目の緊急事態宣言が出された2020年4月に5.1で底をついた後、緩やかな回復傾向にあったが、感染者数の増減や行動制限の影響によって回復と悪化を繰り返し、全産業の景気DIを大きく下回る水準で推移していた。

しかし、2023年に新型コロナウィルスの5類移行に向けた検討が本格化すると、酒場DIは急激に上昇。4月には45.7に達し、全産業の景気DIを2カ月連続で超えた。外食、宴会需要の回復が好材になっている。

企業からは、コロナ禍前の販売実績まで回復しつつあるという意見や、飲食業界でリベンジ消費が発生しているという声も複数聞こえてくる。一方、コロナ禍で夜の外出を控えるように生活習慣を変えたまま、居酒屋の利用が戻らない層もある、という厳しい声もあがっている。

5月12日、酒類大手4社の2023年12月期(予想)の連結売上高が、いずれも前年同期比で増収となる見通しが明らかになった。帝国データバンクは、業務用需要の回復や10月に予定されているビール、日本酒の減税が好材料になるものの、原材料価格や電気代、輸送費の高騰は下押し要因になるとの見解を示した。

※1…景気DIは、帝国データバンクが算出する全国企業の景気判断を総合した指標。50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる。
※2…酒類景気DI(酒場DI)は、「果実酒製造」「ビール製造」「清酒製造」「蒸留酒・混成酒製造」「酒類卸売」「酒小売」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「酒場,ビヤホール」の景気DIから算出。


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Forbes JAPAN Web編集部

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