これは、登山地図アプリ「YAMAP」を運営するヤマップが、登山者にも山岳生態系調査に参加してもらおうと昨年6月に開始した「みんなで守る山岳生態系プロジェクト」の一環、「ライチョウモニター」による調査結果です。ライチョウモニターは、登山者が投稿した写真の位置を日本地図上に示し、AIがライチョウの個体を識別するというもので、そのデータを環境省信越自然環境事務所と共有し、国の「ライチョウ保護増殖事業」に役立てています。
現在、環境省信越自然環境事務所は、人工的に繁殖させたニホンライチョウを放鳥するなどして増殖を目指していますが、専門家による調査と並行して、登山者に協力を呼びかけています。目撃情報を記入した観察カードを、中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイの駅や山荘に設置した回収箱に入れてもらうというものです。2022年4月1日から10月31日までで、カードの配布数1000枚に対して回収できたのは172件、写真提供数は47件でした。
一方ライチョウモニターは、投稿件数が530。ライチョウが映っていた写真の投稿数は436件と大変に多く、写真から個体が識別できたライチョウの数は、観察カードでは18だったのに対して、ライチョウモニターは139と7.7倍にのぼりました。そこから、2021年の調査で推定されていたライチョウの「なわばり」が拡大し、南駒ヶ岳と三ノ沢岳方面に生息域が広がっていることがわかりました。
ただし、なわばりの拡大に関しては、環境省は元になるデータが過小評価されていた可能性があると指摘しています。なので単純にライチョウが増えていると喜ぶことはできません。あくまで、調査件数が大幅に増えたことによって、それまでわかっていなかったことが見えてきた結果だと言えます。
しかしずれにせよ、こうしたSNSを活用した市民参加型のビッグデータを構築することで、調査の解像度が格段に増したことは事実。シチズンサイエンスと自然環境調査のDXがその実力を示したわけです。SNSを使って市民がさまざまな調査に気軽に参加できれば、世の中のあれやこれやが正確に見えてくるばかりか、市民の意識も向上するはず。大いに期待したいところです。
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