コネチカット州グリニッジに本社を構え、1000億ドル(約14兆円)を運用するAQRは創業以来、バリュー株が長期的にはグロース株を打ち負かすと唱えてきた。バリュー株とは、自動車業界で言えばステランティスのように割安で退屈な株式銘柄のことだ。それに対し、グロース株は急成長中のセクシーな企業で、フェラーリなどがその一例に挙げられる。
バリュー株投資の正しさは過去100年の大半で証明されてきたが、連邦準備制度理事会(FRB)がヘリコプターマネーで危機に対処したときから、それが機能しなくなった。割安な株が放置された一方、グロース株は低金利に後押しされ、かつてないほどのプレミアムをつけた。
するとAQRの顧客は同社に対する信頼を失い始めた。バリュー株のロングポジションと人気株の空売りを組み合わせた同社の「マーケット・ニュートラル・ファンド」の運用資産は、2018年から2020年にかけて、24億ドルから5500万ドルにまで縮小した。
しかし、2022年になると状況は劇的に好転し、マーケット・ニュートラルファンドは昨年、27%のリターンを達成。企業の気候変動への対処にロングとショートの両方で賭けるカーボンアウェア・ファンドは、2022年に市場全体を35ポイント上回る実績を叩き出した。
1994年にシカゴ大学で博士号を取得したアスネスは、ノーベル経済学賞受賞者のユージン・ファーマのもとで経済学を学び、ゴールドマン・サックスでヘッジファンドを運営した後の1998年にAQRを共同創業した。同社は、投資信託から年間約0.4%から1.7%の手数料を徴収し、運用資産の大半を占める個人口座からも非公開の金額を徴収している。AQRの利益は、確認可能な直近の年の2017年に8億700万ドルを記録し、売上高は13億ドルだった。
バリュー株の回復は始まったばかり
アスネスは、グロース株に対してバリュー株がどの程度安くなりすぎたかを追跡するバリュー・スプレッドと呼ばれる指標で市場の動向を予測しており、バリュー株の投資家が良いポジションにと指摘する。バリュー・スプレッドは、2021年11月のピーク時に100パーセンタイルを記録したが、数年後の今も88にまでしか戻っていない。AQRがショートポジションをとるフェラーリの株価収益率(PER)は49倍だが、ロングポジションをとるステランティスのPERはわずか3倍だ。アスネスは、バリュー株の回復がまだ初期段階だという予測に賭けている。
(forbes.com 原文)