陸上養殖が注目を集める サステナブルでおいしい魚

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管理が行き届くので生産性が高い、人手が少なくて済む、経営が安定する、さらにトレーサビリティー対応、環境負荷の軽減といったメリットから、水産物の陸上養殖には水産庁も推進に力を入れています。現在、日本各地で陸上養殖が盛んに進められていますが、このたびエア・ウォーターが北海道で陸上養殖プラントの稼働を開始しました。今後、プラントの設計、設備の運転、メンテナンスをパッケージ化した「陸上養殖プラットフォーム」の提供を行うということです。

エネルギー、水処理、食品保存、エレクトロニクスなどの技術を有するエア・ウォーターは、その商材を投入したサステナブルな陸上養殖プラットフォーム「杜のサーモンプラント・東神楽」を完成させました。魚種はニジマス。出荷量は年間30トン(1万2000尾相当)を予定しています。

ここで養殖するニジマスは、メスの三倍体です。三倍体とは、受精卵を温水に浸けることで3組の染色体を持つように変化した魚のことを言います。通常、ニジマスは2年ほどで成熟して卵を産むため、そこで成長が止まり、肉質も低下します。三倍体は成熟しないため、味を保ったままどんどん大きくできます。「杜のサーモンプラント・東神楽」では、水に酸素を混ぜることで、早く大きく育てることができます。

プラントは、フィルター濾過で水をリサイクルしながら約20〜30パーセントを換水する半閉鎖循環式。排水で植物を育てるアクアポニクスも同時に行います。出荷数週間前にはうま味を出すために人工海水を入れるので、そこでウニなどの飼育も行うということです。今後約1年をかけて水質のIoTによる遠隔管理などの低コスト化と省力化、排水の再利用などを通じた中小規模でも採算が取れる技術を確立し、各自治体、漁協、外食チェーンなどへの陸上養殖プラットフォームンの展開を目指します。

さらにエア・ウォーターが2024年夏の完成を目指して長野県に建設中の「地球の恵みファーム・松本」では、地域で未利用のバイオマス資源や養殖の廃棄物を発電原料に使う、エネルギーの地産地消と資源循環モデルを実現させるとしています。

水産資源の乱獲や気候変動による漁獲高の低下、輸入魚の価格高騰などを受け、持続可能な漁業として陸上養殖には大きな期待が寄せられています。エア・ウォーターは、人気のサーモンの安定供給で食糧自給率の向上に貢献し、2030年には同事業で年間売り上げ100億円を目指すということです。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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