「僕が18歳のときに亡くなった祖父は、よく“成功すれば鼻高々になるものだけど、そうなってしまうと周りがついてこなくなり、それ以上の成功は望めない。だから常に謙虚でありなさい”と言っていました」
2018年にタイミーをローンチし大きく成長させてきた小川だが、今の自分が置かれているフェーズを「世界を代表する経営者になるための修行期間」だと表現する。
祖父が遺した言葉や、先行する日本の起業家たちの足跡もふまえ、小川は小さな成功では満足しない。自らの手でタイミーを世界的な企業に育てるためにも、自分自身の成長が必須だととらえている。
「従業員の雇用を守らないといけないし、株主からのプレッシャーもあります。すべての責任が僕にあるからこそ自己研鑽もしますし、先輩にアドバイスを求めることもあります。日々成長です」
>>前回 #3 5年で累計273億円調達。タイミーの成功要因は?
「座学」が足りていない
最近は修行の一環として、これまでほとんど読んでこなかったビジネス書を、意識的に読むようにしている。これまでは経験からの学びでやってきたが、さらに書籍から体系的な知識を得ることで、経営者として高みを目指そうというのだ。小川の意識を読書に向かわせたのは、社外取締役の渡辺雅之からの助言がきっかけだった。渡辺は、マッキンゼーを経てDeNA創業に携わり、エンジェル投資家として国内外のスタートアップに投資してきた人物だ。学生起業家としては十分以上の成果を上げているものの、経営者としてより大きな成功を目指すためには、「座学」が足りていないと指摘された。
「例えばこれから数千億規模の調達も視野に入ってくると、ファイナンスの基礎がない経営者に、その是非を判断することはできない」と。
学生起業家が経験で身につけた知識で乗り越えられる経営規模を大きく超えつつある今、そのギャップを埋めるためにも経営をゼロから学ぶ必要があった。