宇宙

2023.06.02 14:00

NASAは2033年に火星への有人ミッションを行なうべきだ

火星に向かう探査機の想像図(Getty Images)

火星に向かう探査機の想像図(Getty Images)

NASAは火星を周回し、帰り道に金星も周回する初の有人ミッションを実行するために、2033年の稀有な惑星整列の機会を利用できる可能性がある。初の惑星間宇宙飛行となるこの旅は、2037年に計画されている初の有人火星着陸の先駆的ミッションになるだろう。

「2033年は、今後25年間の中で火星へ行く最適なタイミングです」とボーイングのミッション管理・運用マネージャー、マット・ダガンが、ワシントンD.C.で行われた2023 Humans To Mars Summitで述べた。「火星へ行くために必要なエネルギーと燃料の量から考えても、これは15年に1度やってくる特別なチャンスです」

果たして本当に実行されるのだろうか?

2033年でなくてはならない理由

火星は2033年6月27日に「衝」を迎える。これは26カ月に一度起きる事象で、地球が火星と太陽のちょうど真ん中にくる。このため地球の夜空では火星が最も大きく最も明るく見える。

衝の時の火星は、行程を劇的に短くできるため、宇宙船を送り込む絶好機だ。

2033年に実施可能なわずか570日間という低リスミッションの詳細な計画が進められている。ほとんどの有人火星ミッションは、完了までに800~1000日間を要する。さらに今回の計画には金星でのフライバイ(接近飛行)も含まれている。

NASAの計画

Journal of Spacecraft and Rockets誌に最近掲載されたNASAジェット推進研究所(JPL)のメンバーによる論文には、初の火星基地建設を開始する野心的な計画が展開されている。

主著者はJPLに所属するNASAの火星探査プログラム主任技術者、ハンフリー・ホッピー・プライスだが、これはJPLの内部研究であり、NASAの正式な計画ではない。

火星に着陸するミッションではないが、この先駆的ミッションで宇宙飛行士は火星と金星を訪れ、後者からスリングショット効果を受けることでより早く地球に帰ることができる。論文は「2033年のミッションは、価値が高くエキサイティングで感動的な旅であり、火星と金星の両方を訪れる初の惑星間有人飛行である」と説明し、NASAの総費用が170億ドル(約2兆3800億円)になると記している。

第一段階としてのフライバイ

これらの考えの一部は、ボーイング社のミッション計画に基づいている。同社は2033年および2035年に火星へのフライバイを行うミッションを目指す研究を複数実施してきた。

ボーイングの結論は単純かつ大胆だ。「本当に小型軽量のミッションを望むなら、2033年は行くべき時であり、加えて、私たちはフライバイを望ましい第一歩だと考えてきました。それはミッションの複雑さをさらに軽減できるからです」とダガンはいう。

NASAのアポロ計画では、アポロ8号の月周回からアポロ10号の月着陸船テストまで、アポロ11号以前に、着陸以外のあらゆることを行っていた。火星を周回するミッションは理に適っていると思われる。NASAが火星への初めての旅で宇宙飛行士を着陸させるのはリスクが高く、焦りを感じさせる。
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翻訳=高橋信夫

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