ホンダがアプローチを変えた背景には何があるのか。
F1では2014年からハイブリッドエンジンが採用されているが、新ルールではそのレイアウトが大きく変更されることになる。一番大きいのは、ハイブリッドシステムのうち、ターボからエネルギーを回収(エンジンの排気ガスを電気エネルギーへと変換)する〈MGU-H〉がなくなり、エンジンの出力に占めるハイブリッドパワーの割合が大きく増えたこと。「現状では、内燃機関に比べ、電気の占める割合は20%以下です。しかし、新しい規制では約50%以上の電動化が求められており、電動化に向けてさらに前進しています。電動化の技術は、今後、私たちがクルマを生産する上で役に立つと思います」と渡辺氏は強調する。
なぜレッドブルと続けないのか?
かつてホンダは、レッドブルとマックス・フェルスタッペン選手のコンビで過去2回のドライバーズタイトルを獲得し、昨シーズンはコンストラクターズタイトルもゲット。このコンビは、2023年にダブルタイトルを獲得する可能性が十分にある。レッドブルは今シーズンの開幕から圧倒的な強さを見せ、これまで5戦全勝を記録しているのだから。しかし、レッドブルは2026年に向けて自社でエンジンを製造することを決定し、米国の大手フォードとパートナーシップを結び、パワーユニットへの投資とバッジングを行うことになった。
ホンダは、2026年からはレッドブルではなく、英国のアストンマーティンにスイッチ。昨年7位に終わったアストンマーティンだが、フェルナンド・アロンソ選手が今年に入って、非常に好調な走りを続けてきていることで話題になっている。競争力を大きく前進させ、今週末のモナコGPを前にコンストラクターズ選手権でレッドブルに次ぐ2位につけている。
アロンソも、フェルスタッペンとそのチームメイト、セルジオ・ペレスに次いで、ドライバーズ選手権で3位にランクイン。とはいえ、現在42歳のアロンソが2026年にまだ参戦しているかわからないので、ホンダとアロンソの名前を繋げられるか、それは不明だ。
しかし、現在のアストンマーティンの躍進は、過去5年間の大規模な投資と再建プログラムの結果もたらされたものだ。アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズのグループ最高経営責任者であるマーティン・ウィットマーシュは、次のように述べた。
「アストンマーティンは、F1で勝つためのチームを作っています。適切な人材を採用し、必要な施設に投資し、勝つための正しい文化とプロセスを発展させてきました」と。新しい風洞も建設中で、2024年末の完成の予定と意気込みを感じさせる。
「ホンダのような世界的なモータースポーツの巨人と提携することは、我がチームにとって非常にエキサイティングで、さらなる重要なステップとなります。サーキットで成功するという執拗な野心を共有するホンダとパートナーシップを結ぶことができ、とても誇りに思いますし、光栄に思い、感謝しています」と、ウィットマーシュ氏。
ホンダがこのようにF1に復帰することに対して、多くの業界人は興奮しているけど、中には、ネガティブに解釈する人もいる。例えば、同僚の一人は、「F1はやらなくても、中国のカーメーカーはどんどんEV化を進めているけどね」と言う。また、イギリスの同僚は、「ホンダはF1に復帰したり、撤退したり、また復帰したりすると言うのは、あまり格好いいことじゃないので、2026年に復帰するなら、スポーツマンシップに則って、成績が良くても悪くても、しっかりと参戦し続けることが大事でしょう」と言う。
僕も同感だ。アストンマーティンとのパートナーシップに期待してるけど、フェラーリとメルセデスベンツのように、何があっても、経済状況はどうあれ、ホンダにもずっと参戦していて欲しいね。
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