リーダーシップ

2023.06.26 10:00

影響を与えることは難しくない その積み重ねで世界も変えられる

鈴木 奈央
僕自身は1997年からニューヨークで暮らしている。実は暮らし始めた当初、自分が日本人であることを隠していた。特に仕事において、日本人のラベルを貼られたくないという気持ちを強くもっていた。

それは、日本人であることが知られてしまうと、たとえ仕事で成果を出したとしても「”日本人にしては”頑張っているね」という評価から抜けられないと思ったからだ。英語が母国語ではないというハンデもあり、マイナスからのスタートだという意識によるものだった。

しかし30代、40代になるに従って、その意識は変化しつつある。僕が30代になる頃には、かつて世界を席巻した日本企業の勢いはなくなってきており、アメリカでも「日本ってもう終わった国だよね」と言われ始めていた。現在もアメリカで仕事をしていると、日本が世界の中で存在感をなくしていことは痛感せざるをえない。同じアジアの韓国や中国の勢いが凄まじいことも、日本が目立たなくなっている一因だろう。

 Morenovel / Shutterstock.com

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しかし「日本ってもう終わった国だよね」という言葉を聞いたときに、僕は強い反感を抱いた。日本だってまだまだ捨てたものじゃない、と。

いろいろな国の人と仕事をする機会があるが、I&COの東京チームと仕事をしていると、日本人の仕事の“基本レベル”は世界トップクラスであると思う。実際僕の周りでも日本人の仕事の丁寧さや正確さには定評があるし、チームやプロジェクトに必要とされる素質は間違いなく高い。

一方でこうした特性が、多くの日本企業にとって、ビジネスの場で世界と台頭に渡り合う結果に直結していないことを残念にも思う。だから今、僕の中には「日本に貢献したい」「日本を世界で必要不可欠な存在にしたい」という新たな考え方の軸ができている。

僕自身ができることは限られるが、自分やI&COが創り出すものが少しずつでも世界に認められることで、世界は再び「日本はまだまだやるな」と思ってくれると信じているし、いずれは、日本や世界にいい影響を与えたいと願っている。

世界はすぐには変わらないが、冒頭で紹介したエピソードのように、周りに影響を与えることを難しく考えすぎる必要はないのだ。その積み重ねが世界を変えていく。
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文=レイ・イナモト

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