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2023.05.29

「風力発電」に活路見出す、いわき市の胆力|クレイ勇輝

福島県いわき市の内田広之市長(右)とクレイ勇輝

内田(続き) 風力発電の導入は各地で進んでいますが、認証資格を得るための環境をいわき市に作れば、全国から人を集めることができるわけです。

クレイ 中高生に向けて、SDGsも兼ねた学びの段階から関心を持ってもらい裾野を広げる取り組みがあると良いのではないでしょうか。

内田 実はすでに市内の中高生に向けて出前授業を始めていて、福島高専や地元の工業高校でも職業体験の機会を設けています。

クレイ 世界を見据えるなら、子どもたちに興味を持ってもらうことは大事ですよね。

自慢は「Jリーグ」チーム ライバルの街は?

クレイ ここからはいわき市の街自慢を教えてください。

内田 サッカーJ2リーグに所属する「いわきFC」ですね。2012年に創設されてから10年間でグッと成長しました。最初は福島県社会人リーグのチームでしたが、2022年にJリーグに加盟し、昨年1年間でJ3からJ2に昇格しました。

クレイ プロスポーツチームの経済効果はどうでしょう?

内田 他の都市のケースでは、J2、J3のスタジアム経済効果で、10数億円という数字は出ています。1試合でJ3は2000人、J2では5000人の集客と一般的に言われています。「いわきFC」はまだ成長段階なのでこの数字には及ばないのですが、毎週末チームカラーの赤いユニフォームを着たサポーターの方たちがスタジアムへと向かう流れは、数千人規模でできていますね。

クレイ 数千万円の利益を生む事業を作るのも大変ですから、決して小さな数字ではないと思いますね。

内田 次の目標はJ1昇格ですが、「いわきFC」の大倉智代表はサッカーを通じて「いわき市を東北一の都市にする」と掲げています。

クレイ プロスポーツチームの誘致はどの街でもできるわけではないので、「いわきFC」の存在は大変な強みですね。いわき市がライバルとしていたり、お手本にしている街はありますか?

内田 青森市です。駅、商業エリア、エンタメエリアと居住区が集約されたコンパクトシティ化が進んでいて、以前訪れた時、駅前に人の流れがあり勢いを感じました。

現在、青森市の人口は約26万人、いわき市の人口は約32万人です。人口減少の推移をみると、いわき市の20年後が26万人くらいと考えられています。経済、財政とも同じ規模であり、その中でお手本とするところは多いと思います。

他にも山と海があって街があるというのも似ていますし、首都圏で経験を積んだ若い人たちが戻って来る、還流する仕組みはいわき市でも見られる現象でした。都市部との適度な距離が地元への意識を醸成するのかもしれません。

クレイ いわき市の変えたいところは何でしょう?

内田 いわき市は東北でありながら最南端に位置しているので、雪はほとんど振りません。年間で数日パラパラと振るくらいで、雪が降ると不慣れなため渋滞ができるほど。それくらい天候はいい。ただ、東京から特急で2時間半くらいかかります。この時間がもう少し短縮されるといいなと思います。公共交通網の整備というのも今後の課題だと思っています。

もうひとつ、いわき市の強みであるものづくり産業が、時代の流れに対応してチャレンジすることを忘れずに、これからも存続していただきたいと思っています。


内田広之◎1972年生まれ。福島県いわき市出身。1996年文部省入省。2007年秋田県教育庁高校教育課長。2017年文部科学省教育改革推進室長。2019年福島大学理事・事務局長。2021年9月いわき市長就任。

クレイ勇輝◎実業家。2005年、神奈川県の逗子海岸で海の家ライブハウス音霊 OTODAMASEA STUDIOを発足し、音楽ユニット「キマグレン」結成。2008年、NHK紅白歌合戦に出場。今も実業家として様々な分野で活動している。

文=児玉也一 写真=岡田清孝

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