太陽系が通過中のオリオン腕(わん)から見ると、球状星団は天の川銀河の中心周辺に集まっているように見え、夏には北半球から見ることができる。
しかし、ヘルクレス座球状星団や、いて座球状星団、ケンタウルス座のオメガ星団など、天の川銀河のハロー周辺に見える177個の球状星団についてはいずれも、天文学者がまだ答えを出していない謎が多く残されている。
球状星団とは一体何なのか、どこから来たのか──そして、最も好奇心をかきたてられる疑問は、球状星団にある無数の星々の組成が根本的に異なっている理由はなぜなのか、というものだ。どれも同じちりの雲から生まれたに違いないのに。
天文学者たちは何世紀にもわたりこの疑問に答えられずにいたが、そうした問いすべてに対する答えが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影した最新画像から示された。球状星団は、超大質量星から生まれた可能性があるのだという。
いて座の球状星団「M22」。太陽に最も近い球状星団の1つで、直径は約200光年、集団としての明るさは天の川銀河で知られている150の球状星団で3番目だ。(ESA/Hubble & NASA)
スイスやフランス、スペインの研究チームが15日、科学誌Astronomy and Astrophysicsに発表した論文では、ビッグバンからおよそ4億4000万年後に存在した原始球状星団に、複数の「超大質量星」の化学的痕跡を初めて発見したと報告されている。
超大質量星は巨大な恒星で、質量は太陽の約5000~1万倍、中心部の温度は太陽の5倍だ。
超大質量星は球状星団と異なり、短期間で燃え尽きて死を迎えるため、痕跡を見つけることが困難だ。
バルセロナ大学ICREAの教授で、本研究の共著者であるマーク・ギレスは「球状星団はおよそ100~130億歳だが、超大質量星の最大寿命は200万年だ」と説明。「そのため超大質量星は、現在観測可能な星団からごく早いうちに姿を消した。残っているのは間接的な痕跡だけだ」と述べている。
ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、これまでに観測された最も遠い銀河「GN-z11」(NASA, ESA, P. OESCH (YALE UNIVERSITY), G. BRAMMER (STSCI), P. VAN DOKKUM (YALE UNIVERSITY), AND G. ILLINGWORTH (UNIVERSITY OF CALIFORNIA, SANTA CRUZ))
ウェッブが撮影した、宇宙で最も遠く、最も若い銀河の1つである「GN-z11」(発見は2016年、ハッブルとケック天文台の観測によるものだった)の光は非常に高い窒素濃度を示しており、研究チームによると、これは水素が非常に高い温度で燃焼したとしか説明できない。GN-z11はまた、星の密度も非常に高い。このことから、超大質量星がまだ存在していた時に、内部で球状星団が形成されていたことを示唆していると研究チームは結論している。
これは、球状星団の起源に関する興味深いヒントだ。研究チームは、自分たちの理論を検証するために、今後もウェッブを使って宇宙の彼方にある球状星団を研究する予定だ。
(forbes.com 原文)