京セラ創業者の稲盛和夫さん|私が尊敬するカリスマ経営者

京セラ創業者 稲盛和夫

肌着メーカー大手のグンゼ。プラスチックフィルムやメディカル分野など多角展開を続ける同社の社長に21年佐口敏康が就任した。

佐口が尊敬する経営者とは、昨年惜しまれつつ他界した稲盛和夫だ。


私が尊敬するのは……
京セラ創業者 稲盛和夫さんです。

稲盛氏は世の中、人心が常に変わっていくなかで、何が正しいことなのかを細部にわたって考え、それを具体策として現場に落とし込んでいかれた。経営を損益だけでなく、プロセスとその目的を重視し、それを実践する仕事を通じて、自らの心を磨き仕事を精進の域に高めていくことを勧められている。このような経営を実践しながら京セラ、KDDI設立、JAL再建など多くの成果を残した経営者は稲盛氏以外にいないと思う。私自身、日々精進を続け、少しでも成長していきたいと思っている。
佐口敏康 グンゼ 代表取締役社長

佐口敏康 グンゼ 代表取締役社長

佐口敏康◎東京都出身。1984年千葉大教育卒、同年グンゼ入社。プラスチックカンパニー長などを経て2014年に取締役。取締役常務執行役員、取締役専務執行役員を経て、21年6月から代表取締役社長。プラスチックフィルムを製造する守山工場(滋賀県)をサーキュラーファクトリーに転換する取り組みを進めるなど、経済的価値と社会的価値を両立させるサステナブル経営を積極的に展開し、社会課題の解決に取り組む。


たまたま話題が先に亡くなった稲盛和夫に及んだ時だ。

「これはいまも私の人生の指針です」

こういって胸ポケットから取り出し見せてくれたのが「JALフィロソフィー」と書かれた小さな手帳だった。前職が日航とは聞いてはいたが、退職したいまも手帳を大事そうに持っていることに驚いた。

手帳を取り出したのは現在、「日本体操協会」会長を務める藤田直志。藤田は、2010年に日本航空(JAL)が2兆3000億円も負債を抱えて破綻した時の執行役員旅客営業本部長だった。同社の再建のためにやって来た稲盛和夫との面談で、藤田は責任を取って辞任する意向を伝える。

黙って聞いていた稲盛は藤田に言う。

「行くも地獄なら、引くも地獄やで」

そしてこう続けた。「なら一緒にやろうや」。

“殿様商売”といわれるほどプライドの高かった日航を稲盛は変えていく。

稲盛が日航に移植したのは稲盛が生み出した「アメーバ経営」と呼ばれる手法だった。簡単に言ってしまえば、こういうことだ。

10人程度の小さな組織に分け、一人ひとりが経営者のように考え、行動し、成果をあげ、黒字化するならば、会社全体も黒字化できるというもの。「アメーバ」と呼ばれる小集団の独立採算制度だ。リアルタイムで管理会計がわかるように、小集団ごとの会計も導入した。

「コックピットで計器を見るんと一緒ですわ。飛行機飛ばす会社やから得意やろ」。稲盛は子どもや孫を諭すかのように語りかけた。

稲盛が生み出した「アメーバ経営」を支えるのが「JALフィロソフィー」にも記されている、いわば稲盛の“哲学”だ。
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文=児玉 博 イラストレーション=フィリップ・ペライッチ

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎スモール・ジャイアンツ/日本発ディープテック50社」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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