我々が運営するUrban Cabin Instituteでは、地球や社会に貢献するための「インパクト・リーダーシップ」プログラムを提供しているが、そこで日本の文化や哲学から人生観を学びたいという欧米の経営者たちが増えている。日本の精神性や自然との共生の考え方が、知識層を惹きつけているのだ。
3月にはスイス人の若手経営者が、3日間で2万ドル(約270万円)の資格取得コースを受講するために来日した。最終日を終えた彼は、「想像をはるかに超える、人生を変える体験だった。五感をフルに使って感謝しながら生きるという、人生に対する新たな見方を発見した」としみじみ語っていた。帰国後も、自分の感情のコントロールに活きている、という報告も届いている。
このような魂の共鳴とも言える時間は、受ける側のみならず、提供する側の心をも豊かにしてくれる。
ファミリービジネスと旅
日本では全企業の90%以上を、ファミリービジネスが占めている。その割合は、ドイツと並んで世界トップだ。これらの経営者からは、幼い頃から親と旅先で経験したことが忍耐力やチャレンジ精神を養ってくれたと聞くことが多い。実際に彼らは、出張費はリーズナブルに抑えつつ、家族旅行となると予算が青天井だったりする。特に海外旅行は、子息を異なる文化に触れさせ、多様性を肌感覚で理解させる恰好の機会。将来、子息の留学や国際的な活躍を望む親にとっては、海外の人々や言語、風土に慣らす一歩ともなる。
日常と違う環境で、スキーやダイビング、キャンプ、飛行体験など新しいことに共に取り組む。それは親子の絆を強めるだけでなく、子が親に一目置くことにも一躍買っている。
フランス人の友人は、スーパーリゾートに家族や親戚、友人などを含む大きなグループで長期滞在し、スポーツや社会貢献活動などを通して家族の団結を強めている。秋田の女性経営者は、父親とのスキーの経験が内気な性格を変えてくれたことから、社員の子息にも同様の体験を提供すべくスキー教室を開催しているという。
その子息たちはやがて親になり、自分の子供たちと再び旅に出るだろう。こうして「旅」は資産形成や事業承継の上で、重要な「ポートフォリオの一つ」になっていると、多くのファミリーを見てきて感じている。