2023.05.06 15:00

仏ノルマンディーの小さな村、押し寄せる観光客に苦肉の対応

安井克至

Getty Images

フランスのノルマンディー地方にあるエトルタ村はずいぶん前から人気のある観光地だが、近年、観光客が激増し、当局が観光客数を制限する措置を取らざるを得なくなっている。

フランス北部の海岸沿いにあるエトルタ村は白い断崖と岩だらけの海岸で有名だ。昨年は150万人もの観光客が訪れた。

仏紙ル・モンドによると、さまざまな理由が重なり観光客が急増した。エトルタ村はNetflix(ネットフリックス)のヒットシリーズ『ルパン』の舞台となった。また、ソーシャルメディアのインフルエンサーたちの間でも人気が出た。その結果、面積が4平方キロメートルほどのエトルタ村にかかる圧力は増すばかりだ。

地域に住む人々にとっては、これは混雑した歩道、溢れかえるゴミ箱、地元の店に入るための長い行列を意味する。さらに、地元の活動家によると、大勢の観光客が有名な海岸から小石をどんどん持ち去っているために浸食のリスクが高まっており、気候変動による問題の悪化に拍車を掛けている。

そうした事態を受け、Fodor's Travel(フォドラーズ・トラベル)は2023年「No List(行ってはいけない旅先)」にエトルタ村を入れた。観光客の数に対応できず、廃水処理施設に負荷がかかりすぎて停止したことなどを理由に挙げている。

フォドラーズは「フランスは現在、天候よりも押し寄せる観光客によって引き起こされている海岸線の大きな侵食の問題を抱えている。エトルタ村も観光客の流入で大打撃を受けている。さらに懸念されるのは、人の往来の多さによる頻繁な地滑りだ」と指摘している。

しかし、そのバランスを取るのは難しいだろう。観光は地域経済の主要な原動力であり、他の地域のリーダーたちは宣伝活動を減らすことに消極的だ。

差し当たって、エトルタ村は短時間の立ち寄りを抑制するために断崖の上にある駐車場を撤去した。観光客は現在、海岸付近から歩いて登ることでしか崖の上に行けない。また、観光客が周囲の草地を荒らさないよう、侵入を制限する金属製のフェンスも設置した。そして、エトレタ村の混雑を落ち着かせるために、ノルマンディー地方の他の場所を訪問するよう促している。

エトルタ村議会議員のジャン・バティスト・レニエは「観光は必要だが、バランスを取る必要がある」とフォドラーズに語った。「そうすることで観光客が最も恩恵を受ける。観光客の多くは十分なインフラがないために駐車場や食事をする場所、トイレも見つけられないまま数時間車の中で過ごした後、怒って帰る。このマスツーリズムは誰も満足させない」と指摘した。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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