更新世後期、巨大動物は2度大量絶滅した 菌類の胞子から判明

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今回の論文の上席著者で、自然地理学を専門とする英エクセター大学の上級講師、ドゥニア・ウレゴ博士は、声明で「ゾウなどの大型動物は、例えば植物を食べたり踏みつけたりすることを通して、生態系の調整に不可欠な役割を果たしていることがわかっている」と述べている。

ウレゴ博士の研究は、熱帯および亜熱帯の生態系における環境の変化や、人間と自然環境の相互作用に焦点を当てている。これまでの研究では、化石化した花粉粒や、木炭の粒子などの植物の遺物を用いて、過去の気候変動や生態系の力学を解き明かしている。

「菌類の胞子や花粉、木炭のサンプル分析により、大型動物の絶滅の経緯を追うことができた。さらにこの絶滅が、植生や周囲の火災に及ぼした影響も突き止めることができた」と、ウレゴ博士は述べる。「調査を行ったモンクウェンティーバ湿地の生態系は、大型動物が消えた際に劇的な変化を遂げたことがわかった。それまでとは違う種の植物が繁茂し、火災の件数が増加した」

ウレゴ博士によると、この地域のメガファウナは約2万3000年前にいったんは姿を消したという。興味深いことに、それから約5000年後に、メガファウナは再びここを生息地とするようになったが、その個体数は最初の絶滅前のレベルに戻ることはなかった。そして約1万1000年前、これらの動物は突然、すべて地上から消え去った。

これらの巨大な動物たちが突然絶滅に至った、その原因は何なのだろうか? 確実なことはわからないが、複数の要素が絡んでいる可能性が高い。例えば、当時勢力を拡大しつつあった人類からの狩猟圧の高まりや、(氷期と間氷期を繰り返していた更新世の)急激な気候変動、植物の絶滅の連鎖、さらには小惑星の衝突までもが考えられている。

今回の論文の主著者で、エクセター大学の修士課程で自然地理学を専攻するフェリックス・ピムは、こう指摘する。「メガファウナが消え去ったのち、モンクウェンティーバ湿地に生える植物の種に変化が起きた。より木質で食べやすい(草食動物に好まれる)ものが増えたほか、種子の拡散に関して動物に依存していた植物は失われた」

「メガファウナの絶滅後は、火災が頻発するようになった。これはおそらく、燃えやすい植物が、食べられたり、踏みつけられたりしなくなったからだろう」とピムは述べる。「この地域は全体として、ここに生息していたメガファウナの個体数減少に影響を受けやすい状況にあったことが、我々の発見からうかがえる」

ある地域に生息する草食動物の個体数が減ると、その影響で、特定の種の植物が種子を拡散できなくなったり、火災の脅威が増したりすることがある。人類も、それまで恩恵を受けていた生態系を失うことになる。こうした深刻な悪影響を防ぐには、効果的な保護の取り組みを計画する必要があると論文の著者たちは指摘している。

出典:フェリックス・C・ピム、フェリペ・フランコ=ガビリア、イスマエル・G・エスピノーザ、ドゥニア・H・ウレゴ、2023年「コロンビアのアンデス地区東部における更新世のメガファウナ個体数減少の時期および生態系への影響」、『Quaternary Research』誌|doi:10.1017/qua.2022.66

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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