アート

2023.05.05

ジェネレーティブアート第一人者が語る テクノロジー、ビジネス、アート

アルゴリズムアートはアーティストにとって非常に大きな芸術的挑戦です。なぜならばエンターボタンを押したら最後、生成されるのを待つのみなので。何が起こるかわからず、すべての出力は驚きを伴います。特に「Fidenza」のようなNFTの場合は、999個生成したものが買い手に渡り開封されるまで中身がわからないので、アーティストにとっては非常に緊張します。

しかし、ありがたかったことに、結果は、私が予想もしていなかった美しい出力作品が生まれました。それは長編ジェネレーティブアートが持つ美しい要素です。長編ジェネレーティブアートとは、1つのアルゴリズムで多くのユニークな作品を制作することです。制御できない不確定要素があるため、アーティストにとって挑戦的でありながらも興味深いものです。

市場と作品性

冒頭で述べたように「Fidenza」は、価格の上昇も大きい。NFTという形式で作品をリリースすることは、常に市場価格がオープンに晒されていることとの背中合わせである。アーティストとして、自分の作品価値が常に市場に晒されていることをどのようにみているのか?

ホッブス:市場情報がはっきりとわかることは、アーティストにとっては最初とても受け入れ難かったです。いままでのアートの歴史にはなかった状況に最初は戸惑い、感情的になることも多かったです。同時に学びもしました。まず、市場はアーティストの作品に関係なく上下します。例えば「Fidenza」は1年前と比較して、同じ作品でも価格は異なります。

ただ、作品自体は変化していません、つまり価格は必ずしも作品の品質を反映するものではない、ということを学びました。また、アーティストとしては、どうせ市場に影響を与えられないので、避けられる限り避けたほうが良いのかもしれません。市場の動きに夢中になるのは簡単ですが、できればアーティストとしては、あまり考えないようにしています。最近は、市場の動きを全然見ないようにしています。もちろん、最初のうちは驚き、目を離すことができませんでした。価格が急上昇し、作品への反応がすごいことに驚きました。

私のまわりのデジタルアーティスト達はタイラー・ホッブスの快挙を喜んでいる。デジタルアーティストがアート界を始め多くの方々に注目してもらい価値を認めてもらう大きなキッカケを与えてくれた、と。

ホッブス:日本のデジタルアーティスト達がそのように言ってくださることを、光栄に思っています。デジタルアートはもっと評価されるべきだと思います。そして、デジタルアートがこれからもっと重要な役割を果たし、より多くの評価を受けることを願っています。

なぜなら、それは非常に強力なメディアであり、今の私たちの生活にとって非常に関連性が高いからです。前述のように、私たちはデジタル環境で多くの時間を過ごしているので、デジタルアートは物理的な作品と同じくらい重要であるべきです。そのため、少しでもデジタルアートの業界に貢献できたことを嬉しく思っています。

良いビジネスは一種のアート

昨今「ビジネスパーソンのためのアート思考」が話題になっている。私の過去の記事でもArt Thinking Improbableなどを紹介させてもらったが、不確実性が高まる現在、さらにアート思考がビジネスパーソンにとって重要になると考えている。タイラー・ホッブスはどのようにアートとビジネスの関係を捉えているのだろうか?
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文=西村真里子

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