アート

2023.05.05

ジェネレーティブアート第一人者が語る テクノロジー、ビジネス、アート

私のアルゴリズムからノスタルジックな印象を受けるのは、伝統的な手法で構図や色の関係、動きやリズム、バランスなどを学んだからでしょう。それらはすべて、ジェネレーティブアートを作る上で役立っています。

アーティストを目指し始めた頃は、デジタルアートは作成していませんでしたが、2014年にプログラミングとアートを組み合わせてみることにしました。伝統的なアートを作りつつも、プログラミングは私にとって非常に重要であり、世界を見る方法や物事に対する考え方に大きな影響を与えていたので、その影響を作品に取り入れたかったのです。それが最初のジェネレーティブアートを制作したきっかけでした。

私がジェネレーティブアートを作成し始めた当初の2014年は、いまのようにジェネレーティブアートの認知度や人気がありませんでした。それどころかジェネレーティブアートを制作している人はほとんどいない状況でした。私自身も、ジェネレーティブアートというものを意識せず、ただプログラミングとアートを組み合わせる方法を模索していたのが正直なところです。ただ。試行錯誤を繰り返しているなかで、プログラムが私が理想とする抽象画を生成してくれたときに、多くの可能性を感じ、興奮しました。これが私の最初のジェネレーティブアートを生み出した瞬間です。

テキスタイル(織物)もジェネレーティブアート

──そもそもジェネレーティブアートとは何なのか?

ホッブス:ジェネレーティブアートとは、私にとって、アーティストがシステムやプロセス、ルールを使ってアートを制作する方法のあらゆる形態です。ジェネレーティブアーティストは、1つの作品を具体的に制作することよりも、作品を制作するシステムを制作したり、複数の作品を制作するケースが多いです。私自身はアルゴリズムを作り作品を生み出すことを得意としています。

最近話題のジェネーティブAIは生成(ジェネレーティブ)システムの一種ですが、私が制作する作品とは少し異なります。AIシステムはトレーニング(強化学習)があり、トレーニングに画像が入力されます。しかし、私の作品には入力もトレーニングもありません。すべての情報はコード自体に存在しているのです。私の作品はPhotoshopなどの画像処理ツールを利用せずにこのコードからすべてが生み出されています。
https://tylerxhobbs.com/process

https://tylerxhobbs.com/process


実は、コンピュータを使わずにジェネレーティブアートを制作する方法もあります。手動でもジェネレーティブアートを制作することができるのです。例えば、私があなたに何かを描くための指示を書き留めて渡すことも、ジェネレーティブアートの一種です。やり方はたくさんありますし、必ずしもすべてがコンピューター生成である必要はないのです。他のアート形式と組み合わせて部分的に生成的な作品もあります。

ジェネレーティブアートは1960年代に始まったと言われています。アーティストたちが初めてコンピュータを使ってアートを制作し始めたときです。しかし、私にとっては、それはアルゴリズムアートです。ジェネレーティブアートは非常に広義のものであり、アルゴリズムアートはその中の特定のものです。私がやっていることもアルゴリズムアートです。

ジェネレーティブアートが広い意味でずっと前から存在していたと思います。過去の多くの画家の作品にもジェネレーティブアートの要素が見受けられますし、テキスタイル(織物)は非常に生成的な要素が多く含まれている分野だと思います。作品を制作するプロセスやパターンがあるので、ジェネレーティブアートはすでに何世紀も前からあると言えます。
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文=西村真里子

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