エンタメ業界やアート業界での活用が目立つNFTだが、その波は、地方自治体にも及んでいる。昨今、地方自治体では人口減少、過疎化への対策として、移住や観光ではなく、地域と様々な形で関わる「関係人口」の創出に取り組む自治体が増加。その方法の一つとして、NFTを活用する自治体が現れている。
山形県西川町は4月17日、日本で始めて自治体として公式にデジタル住民票NFT「西川町デジタル住民票NFT」を、1個1000円で1000個を抽選販売。販売開始1分で販売数量を超える注文があり、申し込み締切の4月28日には購入希望が1万3440個に。倍率13.4倍の人気となったことを発表した。
西川町は4月14日、NFTマーケット「HEXA(ヘキサ)」を運営するメディアエクイティと包括連携協定を締結。過去には別の自治体で住民が集まり、任意団体としてデジタル住民票NFTを発行した事例はあったが、地方財政法に基づき、日本の自治体が公式にデジタル住民票NFTを発行したケースは、今回の山形県西川町が初となる。
「西川町デジタル住民票NFT」の保有者は、西川町のデジタル住民であることが証明され、特典として町長と保有者だけのオンラインコミュニティに入会できるほか、町内の水沢温泉と大井沢温泉に無料で入浴できる。同NFTは転売も可能で、5月8日から二次取引開始となる。
西川町の町長は、同町出身で元財務官僚の菅野大志(かんの だいし)氏。2001年に財務省入省後、東北財務局や金融庁、内閣官房のまちひとしごと創生本部事務局、デジタル田園都市国家構想実現会議事務局などを歴任し、2022年に県内最年少の44歳で町長に当選した。
今後、西川町ではHEXAと連携し、ふるさと納税額2.5億円を達成するために、ふるさと納税寄付者だけが入手できる限定NFTを発行し、返礼品として取り扱っていくほか、西川町の公式キャラクター「ガッさん」のHEXAメタバースで使える3D NFTを販売。さらに、菅野町長のAIイメージ動画のNFT販売などを計画しているという。
人口約5000人。山形県の中央部に位置し、面積の95%以上を森林が占める小さな町、西川町。NFTを積極的に活用し、日本の新たな地方創生の成功モデルとなるのか、今後が注目される。
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