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2015.06.30 08:00

ストリーミングの躍進で米TV業界はどう生き残るのか?

shock / Bigstock

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ストリーミングサービスの台頭が映画産業を脅かしている。筆者は先週のリポートでNetflixやHulu、iTunesなどのアメリカ国内の売上が、DVDのレンタル・販売の売上を初めて上回り、2017年には映画館の売上をも超えるとだろうと書いた。このことは、映画関連企業の株主らにとって大きな意味を持つだろう。その一方で、テレビ放送とNetflixの勝負はまだ綱引き状態だ。

Netflixが2014年に加入者数を30%近くも伸ばし、2015年の第一四半期も記録的な成長を記録しているように、インターネットテレビは飛躍的に伸びている。この状況下でテレビ業界は比較的健闘している。プライスウォータハウス(PwC)は、既存のテレビ放送の視聴者数は、2017年までに年間0.9%しか減少しないと予測している。これはネットテレビの高い成長率と比較して、非常に緩やかな減少幅だと言えよう。

視聴者のテレビ離れはまだそれほど進んでいないとはいえ、今後の需要がネットテレビに移行していくことは明白だ。4大ネットワークの視聴者年齢の中央値は54.2歳で、アメリカ人の平均年齢よりも17歳も高い。アメリカでネットテレビへのシフトを牽引しているのは、1980年以降に生まれたミレニアル世代だ。調査会社comScoreによると、ミレニアル世代が視聴するドラマの三分の一はデジタルプラットフォーム経由で、6人に1人は、過去30日間で一度もテレビでドラマを見ていないという。こうした傾向に頭を悩ませるテレビ局は、事態の打開に向けて戦略の見直しを図り始めている。

テレビ局の今秋の番組編成に、彼らの戦略変更が見て取れる。調査会社のUBSによると、各社はゴールデンタイムに従来よりも多くの自社制作ドラマを投入する予定だ。多額の制作コストをかけて大物スターを配役し、番組をインハウスで制作する。テレビ業界が番組スポンサーを募るために行ったプレゼンの内容を受けて、ABC、Fox、NBC、CBS、CWなどの各ネットワークは、視聴率向上のための策を練っている。

各ネットワークの親会社にとって放送からの売上は重要だ。ABCの親会社であるWalt Disney Companyは、国内最大手のスポーツ放送ケーブル局ESPNを運営しているが、成長率はテレビ放送の方が大きく、売上は19%、利益は90%伸びている。ここで、テレビ局各社がNetflixの脅威にどう対抗しようとしているか紹介しよう。

オリジナル番組の拡大
UBSによると、四大ネットワークのCBS、ABC、Fox、NBCにCWを加えた5社は、今シーズンよりゴールデンタイムに5本のオリジナル番組を加え、オリジナル番組の本数が全体で3%増える。
こうした動きには二つの背景がある。一つは、再放送番組の視聴率と利益が過去最低レベルになっていることだ。過去番組の再放送は、ストリーミングサービスによるオンデマンド視聴が勝者となっている。もう一つには、NetflixやAmazonが独自制作したドラマシリーズの「House of Cards」や「Transparent」によって、競争がさらに厳しいものなっていることが挙げられる。

テレビ局が重圧を受けていることは、NBCの番組構成の大幅な変更を見れば明らかだ。NBCは今シーズン、16本の新番組を投入し、13本の番組を中止するという。UBSは、NBCの動きを、他の放映会社と比較して野心的すぎると見ている。

インハウスでの番組制作
最近のテレビ業界の風潮で、ABC、Fox、NBCは外部の制作会社を極力使わず、今シーズンの番組制作をほぼ全てインハウスで行った。例えば、ABCは全10本の新番組について、一部を除き全てを自社で制作し、Foxは新番組10本のうち、9本をインハウスで制作している。
自社制作の番組が当たれば、テレビ局は全ての利益を手にすることができる。反対に、外せば損失も全て被ることになり、テレビ局にとってはリスキーな動きだとUBSは分析している。また、番組が失敗すると、テレビ局の評判が落ち、今後の番組の成功に悪影響を与える可能性もある。
大手テレビ局の中で、唯一CBSだけは、外部スタジオを使って一部の番組制作を行った。新番組7本のうち、完全に自社で制作したのは2本だけで、2本はABCと、1本は20th Century Foxと、残りの2本はWarner Brosと共同で制作している。

「大きければ大きいほど良い」
秋シーズンは、「大きければ大きいほど良い」があたかもテレビ業界全体のスローガンとなっているように見える。各社は、キャスト、セット、特殊効果、予算など、あらゆる面でこれまでよりも費用を増やしており、UBSによると番組制作コストは2%増加するということだ。
番組制作費が最も高額なのは、NBCのドラマ「Blindspot」だ。女優のJamie Alexanderが主演するこのドラマの制作費は今シーズンだけで5,900万ドル。過去最高額だったリアリティ番組の「The Voice」に次いで2番目に高く、ドラマ部門では過去最高だ。
今年は、他にもRob Lowe、Neil Patrick Harris、Chase Crawford、Jane Lynchなど数々の大物スターがゴールデンタイムの番組に登場する。

テレビ局は、コストを抑えるために、既存番組の中で制作費が高いものをいくつか終了したが、それでも制作費の総額は増加している。CBSは、「Two and a Half Men」、「The Mentalist」、「CSI」を終了したことで、1億5,000万ドルを節約し、NBCは、「Parenthood」「Parks and Recreation」を終了したことで、5,000万ドルを節約した。
Foxは、テレビ局の中で唯一、ゴールデンタイムの番組数を減らしたが、それでもゴールデンタイム向けの番組の制作費は、前年から16.5%増えて9億1,200万ドルとなり、四大ネットワークとCWの平均増加率である2%を大きく上回っている。

ドラマ製作本数の増加
2015-2016シーズンの番組ラインナップは、各社ともドラマ偏重となっている。これはゴールデンタイムの新しいトレンドだ。UBSによると、新番組の内訳は、ドラマが70本であるのに対し、コメディは35本で、21本はリアリティ番組など他ジャンルに該当するという。
ドラマの本数が増加したことで、新たに制作された番組の放映時間が増えたことになる。ドラマは通常1エピソード当り1時間だが、コメディは通常30分だ。CBSは今シーズン番組数の増減はなかったものの、ドラマの割合が増えたことで、放映時間は6%増加している。

勝ち目がなければストリーミングと提携する
テレビ局の中で、Netflixとの提携をリードしているのはABCだ。Netflixの最近のヒット作である「Daredevil」は、ABCがMarvel Televisionと組んで制作したものだ。
もし、テレビ局がインハウスで制作した番組がヒットし、Netflixがそれを放映したり、再放送権を買ったとしたら、テレビ局はその収益を丸々手にすることができる。
この流れはテレビ局のインハウス制作への流れを後押ししている。CBSが放映した「Friends」をNetflixが1億1,800万ドルで買った際、この金額を手にしたのはCBSではなく、番組を制作したWarner Bros.とBright/Kauffman/Crane Productionsだった。同様に、Huluが今年4月に「Seinfeld」の再放送権を1億8,000万ドルで買った際、番組を放送したNBCにはこの金額は渡らず、制作をしたSony TVとTime Warner傘下のCastle Rockが手に入れた。

文=デナリ・ティーティエン(Forbes) 翻訳編集=上田裕資

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