教育

2023.05.01

学びの準備を整える「プレ・エデュケーション」

学びは人生を豊かにする

「プレ・エデュケーション教材」と呼べるものは、世の中にゴロゴロ存在している。最近だと、三谷幸喜さん脚本による「鎌倉殿の13人」を観て鎌倉時代の歴史に興味をもった人は多いはず(僕もそのひとり)。世のなかの優れたコンテンツは、学びの種が何重にも織り込まれている。例えば宮崎駿さんのマンガ『風の谷のナウシカ』から、作家すら気づいていない知識や思想を25年かけて読み解いて一冊の本にしたのが民俗学者、赤坂憲雄さん。本のタイトルは『ナウシカ考 風の谷の黙示録』だ。ひとつのコンテンツから、これほどまでに豊かな知的世界を引き出すことができるすごみを感じられる名著だ。
マンガ『風の谷のナウシカ』から赤坂憲雄さんが読み解いた深い学びに出合える本。

マンガ『風の谷のナウシカ』から赤坂憲雄さんが読み解いた深い学びに出合える本。


世のコンテンツが「学びを発動する装置」として働くケースはとても多い。そして面白いのは、学びが発動するきっかけは一人ひとり違う、ということだ。

旅もまたプレ・エデュケーションのチャンスに満ちている。旅の前に読む『地球の歩き方』より、現地で、あるいは帰りに読む『地球の歩き方』のほうが頭に入ってくる経験はないだろうか。

僕たちは団体の活動の一環で、教師と生徒たちと共にボルネオ島でのフィールド授業を実施している。わずか1週間ほどの旅で、多くの子ども(大人も)が劇的に変容する。当時中学1年生の子が帰国便を待つ空港で「帰りたくない!僕の成長をここで止めたくない!」と叫んでいたのが印象的だった。
ボルネオ島のマレーシア領にあるパーム油プランテーションでのフィールド授業の様子。

ボルネオ島のマレーシア領にあるパーム油プランテーションでのフィールド授業の様子。


学びとは成長だ。学びを豊かにすることは、人生を豊かにすることとダイレクトにつながっているのだ。皆さんも仕事で何かに詳しくなりたい、あるいは学び直したいと思ったら、現場に行ったり、当事者に会ったり、歴史をひも解いたり、そのジャンルの映画や小説などを探したりなど、少しばかり寄り道の時間を過ごしてはどうだろう。本格的な学びの前に、「なぜ学ぶのか」を探究することはきっと楽しいはず。ぜひお試しを。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。

上田壮一◎2001年にThink the Earth設立。以来コミュニケーションを通じて環境や社会問題について考え、行動するきっかけづくりを続けている。編著書に『1秒の世界』『気候変動+2℃』など多数。多摩美術大学客員教授。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

文=上田壮一 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎スモール・ジャイアンツ/日本発ディープテック50社」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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