だから普通にアートフェアに出る感覚で参加してくれる人もいれば、ANOMALYさんのように、展示をしっかりつくり込むことで全体の底上げを図ってくれる方々、ギャラリーとしてではなく、いちアーティストとして参加してくれる人などもいます。大切なのは、とにかく参加してもらうこと。そして成功したか否かを、それぞれのものさしで図ることを許容する。そういうコミュニティ設計です。
深井:ちなみに運営サイドに入る売上としては、入場収入と、協賛収入と……?
武田:ほぼ、その2つだけですね。ギャラリーの出展費もありますが、これは本当にささやかです(笑)。今回参加したギャラリーの多くはアートフェアに出展するという経験をしたことがなかったので、とにかく舞台に立ってほしかった。
深井:ある意味、最初から赤字覚悟だったということですね。
武田:もちろんそうです。やっぱり誰かが最初にやらなきゃいけない。上の世代が築いてきたものを継承することを待ち続けるのではなくて、誰かがそれを無視して、何か新しい取り組みをしていく必要がある。30年停滞しちゃっているのはその精神がないからだなと。やるのだとしたら、今じゃなかったらいつやるのよって。
武田悠太◎ログス代表取締役社長。慶応義塾大学経済学部卒業後、アクセンチュア戦略コンサルティンググループに入社。医療、公共領域の新規事業立案、業務改善、政策提言などの業務に従事。2014年、 家業と同じ服飾雑貨問屋の経営に参画し、2016年ログズを設立。以後、衣食住学という4分野に事業を拡大。DDD HOTEL、PARCEL、nôl(実験型キッチンスペース)、GAKU(10代向けクリエイティブ教育)等を展開する。
深井厚志◎編集者・コンサルタント。1985年生まれ。英国立レディング大学美術史&建築史学科卒業。美術専門誌『月刊ギャラリー』、『美術手帖』編集部、公益財団法人現代芸術振興財団を経て、現在は井上ビジネスコンサルタンツに所属し、アート関連のコンサルティングに従事。産官学×文化芸術のプラットフォーム、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパンでの活動ほか、アートと社会経済をつなぐ仕事を手がける。