大人たちに話を聞いてもらえるだけの規模を設計する
深井:今年2月に主催されたアートフェア「EASTEAST_TOKYO 2023」は大反響だったとのこと。動員数はどのくらいだったんですか?武田:入場数だけでカウントすると、ユニークで1万人前後。しかも来場者の滞在時間が長いので、たぶん会場の感覚としてはその2〜3倍はいるような状態だった。想定は4000人程度だったので、超大変でした(笑)。
深井:それは手応えがありましたね。そもそも「EASTEAST_」はどういった経緯で始まったのでしょう?
武田:2020年の発足当初はまだPARCELの開廊から1年で、当時、僕らが主に扱っていた「ストリート・アート」から派生した作家や作品が、彼らが普段から属しているコミュニティや、彼らが根付いている文化的な背景から切り離されてマネタイズされているようになっていました。コアメンバーとの議論をする中で骨子ができていって。
作品だけでなく、作家が根付いているコミュニティをプレゼンテーションするアートフェアをやってみようということで、PARCELとSIDE COREが中心になり、価値観の近しいギャラリストを中心に、7ギャラリーを集って、第1回を開催しました。
とはいえ、やはり身内で固めていても先はない。そこで次の段階としてもっと視野を広げて、東京内の様々なコミュニティを集結させ、「今の東京らしい」生態系を生み出そうと。あえて現代アート外の領域から、実験的な音楽プロジェクトや企業やブランドのクリエイティブディレクションを行う中野勇介をディレクターに迎え、本格的に始動させました。
深井:なるほど。僕も会場に行ったのですが、既存のアート界の顔ぶれとはだいぶ違う、ある種の独特なコミュニティ感が会場全体に漂っていて、新しい地平が拓けていくような予感がありました。それが、武田さんがすでにどこかで育てた既存のコミュニティを持ってきたのか、あるいはそこで新しいネットワークをつくろうとしたのかというのがまさに気になっていたのですが、後者だったんですね。
武田:いえ、「EASTEAST_」が特に何かをしたというわけではないんですよ。僕らは、若い世代を中心に求心力を持ったギャラリーやコミュニティをセレクトして、アート界で既に力を持つ「大人たち」にも注目してもらえるように、規模を意識して設計しただけ。結果的に、参加者が各々で大事に育ててきたコミュニティを呼び込み、それが融合してまた新たなネットワークが形成されていったんです。
深井:おもしろいですね。作品やギャラリーのキュレーションというより、コミュニティ自体の構成をキュレーションするというアプローチであると。