アート

2023.04.22

世界の人気美術館ランキング2022、ロンドンがパリに勝てない理由

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コロナ禍によって、芸術を楽しむための旅は一変した。自宅のソファに座ったままで、劇場がライブ配信する演劇を鑑賞したり、仮想空間の美術館内を移動して作品を鑑賞したりできる機会がどんどん増えている。

よく知られているのは、仏パリにあるルーヴル美術館がコロナ禍に始めたバーチャルツアーだ。しかしデータによれば、人々は再び、世界各地の美術館に足を運び始めている。来館者の回復度合いが群を抜いているのがパリで、ロンドンを数百万人単位で大きく上回っている。

世界中の人に愛されているルーヴル美術館

ルーヴル美術館は、誰もが知る名画「モナ・リザ」などを多くの人にバーチャル体験してもらおうと、オンラインツアーを開始し、大成功を収めた。このツアーのおかげで、現地に足を運んで他の来館者と押し合いにならずに、作品の背景などをじっくり学ぶことができる。

それでも、人々がどうしても訪れずにはいられないのがルーヴルだ。英国の美術専門誌「ジ・アート・ニュースペーパー」が2023年3月に発表した「2022年に最も人気があった美術館/博物館ランキング」で、またもや1位に輝いたのだ。ガラスと金属でできた、かの有名なルーヴル・ピラミッドの入り口を通った2022年の来館者は、770万人を超えた。

さらに驚くのは、ルーヴル美術館を2022年に訪れた来館者数が、2019年と比べて20%下回っただけだったことだ(2019年の来館者数は、コロナ禍前の基準値となっている)。実際、その減少幅は、トップ10入りした他の美術館/博物館と比べてずっと小さい。

世界的なロックダウン中に「モナ・リザ」をはじめとする数々の美術品がオンラインで鑑賞できたにもかかわらず、いまだに誰もが、パリの人気スポットであるルーヴル美術館を訪れてみたいと考えているようだ。

2022年に最も人気があった世界の美術館トップ10

驚きの数字はこれだけではない。ランキング入りした世界の美術館100カ所の来館者数は、合計で1億4100万人に上る。うれしいことに、2022年には来館者数が2021年比で倍増した。しかし、コロナ禍前の2019年の2億3000万人には、まだ届かない。

トップ10に入った美術館/博物館は、欧州が6カ所(トップ5には4カ所)、米国が2カ所、アジアとロシアがそれぞれ1カ所だ。

1. ルーヴル美術館(フランス・パリ)/772万6321人
2. バチカン美術館(バチカン市国)/508万866人
3. 大英博物館(英国・ロンドン)/409万7253人
4. テート・モダン(英国・ロンドン)/388万3160人
5. 韓国国立中央博物館(韓国・ソウル)/341万1381人
6. オルセー美術館(フランス・パリ)/327万182人
7. ナショナル・ギャラリー(米国・ワシントンD.C.)/325万6433人
8. メトロポリタン美術館(米国・ニューヨーク)/320万8832人
9. ポンピドゥー・センター(フランス・パリ)/300万9570人
10. エルミタージュ美術館 (ロシア・サンクトペテルブルク)/281万2913人

ウクライナ戦争と、中国のゼロコロナ政策がなければ、アジアとロシアの美術館/博物館の来館者数は、もっと多かったはずだ。

ランキングの来館者数を見ると、旅行客が再び向かっている先は、以前と同様に、パリ、ロンドン、ニューヨーク、ローマであることがわかる。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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