これぞ、ラスベガス! 新アリーナ「Sphere」に世界が注目する理由

気になるコンテンツは──

ともあれ、最大の課題はコンテンツとして何を編成するか、である。

コンサートやイベントのブッキングが無い時間帯には、4D技術を駆使したイマーシブ(没入型)コンテンツ『ポストカード・フロム・アース(地球からの絵葉書)』と題された60分の作品が当面展開される。チケット販売も、一人49ドル(約6700円)からの価格設定で今月より開始されている。

MSGはスフィア専用の作品を製作するために、ロサンゼルス郊外にスタジオを設置して機材を揃え、既に数本の作品製作に着手していると言われる。3D映画の撮影でもジェームス・キャメロンのような深い専門知識を持った監督ですら至難なのだから、誰も撮ったことの無い大型球形スクリーン用の作品制作は、撮影だけでも相当複雑であることは確実だ。

例えば、撮影に使うカメラレンズも、水平線をどのように取れば直線表現できるかなど、選択が難しい。通常撮影で使うクローズアップ・ショットも、スクリーンが巨大すぎて違和感を与える。16Kで撮影した巨大な顔が球体スクリーンに映し出されたら...。課題が山積している。

また、演出方法についても、舞台に登場する人間の身長に比べ、背後のスクリーンがあまりにも巨大なため、映像と演者の組み合わせ配分が、既存の舞台演出では対応できない。

かなりの試行錯誤が必須であり、その制作費と時間もまた膨大になることであろう。

柿落としはU2

9月29日のこけら落としはU2で決定し、チケット販売も4月24日に登録ファン限定先行受付が始まった。U2は奇抜で大規模なステージを使った演出で定評があり、極めて妥当なアーティストの選択だ。


現にチケットの売れ行きは好調のようで、公演が追加され、一般販売は行わないと発表されたほどだが、果たしてスフィアは、数々の課題をクリアして計画通りフルスペックでのオープンを迎え、大好評を得られるのだろうか。『地球からの絵葉書』はヒットするのか。

ちなみにMSGは、このスフィアをロンドン東部ストラトフォードにも建設する計画である。

当分、エンタメ産業で最も目が離せないトピックである。

連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点

文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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