これぞ、ラスベガス! 新アリーナ「Sphere」に世界が注目する理由

15万7千のウルトラ・ダイレクショナル・スピーカー(超指向性スピーカー)とビーム・フォーミング技術によって、個々の席ごとに計算された最高の音質と音量が届けられるという。演目によっては特定エリアを外国語席として提供することも可能であろう。

また、インフラサウンド・ハプティック(触覚・超低周波音)と称される、音を深みのある振動として体感できるシステムも配備されている。


スイートルームは23室と、通常のアリーナでは50-60室は最低でも用意されることを考えると少なめだが、これはバスケットボールやアイスホッケーなどの興行が行われず、シーズンチケットの販売も無いためと見られる。

イベント毎の貸し出し需要が多く、ライブ公演や新製品の紹介、コンベンションのプレゼンテーション、eスポーツなどが編成されるであろう。

建設費もケタ違い 過剰投資か? 唯一無二か?

2万人収容アリーナの建設工事費が概ね4億ドル程度であるのに対し、スフィアは2019年9月着工時点の予算12億ドル(約1635億円)を大きく超え、完成時には21億7500万ドル(約3000億円)に及ぶものと見られている。

土地の購入費用は含まれていない。これは、隣接するベネチアンホテルを所有するラスベガス・サンズ社が地主であることから、「スフィア」の呼称に「アット・ザ・ベネチアン・リゾート」を付加することを条件に、地代の軽減をオファーしたことによると言われている。

それにしても、最先端技術を徹底的に取り入れた「過剰投資」とも思えるこの施設は、事業として成立するのだろうか。

スフィアの運営では4400人の雇用創出が予測され、MSGによって公表されている年間の売上はグロスで7億3千万ドル(約1000億円)。事業税だけでも4800万ドル(約65億円)と言われている。経営の維持を危惧する声も少なくない。

観客導線への懸念も大きい。スフィアには駐車場が304台分しか用意されていない。ラスベガスでは駐車場の利便性が問われる。隣接するサンズでは1万2千台収容の駐車場をフル稼働している。
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文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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