コロナ禍からもいち早く回復を見せ、2019年に4200万人超の訪問者が齎した369億ドル(約5兆円)の「年間訪問者消費額」も、昨年、訪問者数こそ3880万人であったものの「過去最高」の449億ドル(6.1兆円)を記録した。
更なる成長に向けての布石も盤石のようだ。
今年11月には新たに招致したF1レースの開催を控え、来年2月にもNFLスーパーボウルが2020年に新設されたアレジアント・スタジアムで予定されている。F1で13億ドル(約1770億円)、スーパーボウルで6億ドル(約817億円)の経済効果への期待も大きい。
コンベンションの登録客数についても今年は、2019年の665万人を超えてくるのではないか。開催期間中の法人接待需要による、エンターテインメント関連の売上増も見込まれている。
これぞ、ラスベガス!な、新名所誕生か
こうしたエンターテインメントへの期待の高まりの中、“超斬新” なアリーナの建設が進んでいる。ラスベガスへの進出を目論む、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン社(以下、MSG)の「Sphere(スフィア)」だ。その名の通り、“球形” の2万人収容の大型アリーナで、9月29日のオープニングに向け、工事と演目の準備が最終段階に入っている。
前回のコラムでお届けしたシアトルの「Climate Pledge Arena(クライメート・プレッジ・アリーナ)」とは全く異なる概念で、世界のエンタメ産業界の耳目を集めている。
世界初となる様々な最先端4D技術を注ぎ込み、これまでに存在しなかった新たなエンタメ空間を創造すると言うのだ。
球の外側も内側も── 世界最大&最高解像度の「LED」が売り
スフィアの特徴は何といっても、その球形の内外両側の壁面をほぼ完全に覆う、最新の高精細LEDパネルだ。アリーナの内側のみならず、外壁も演出に活用することで、街全体でエンタメ世界が表現されているラスベガスにあっても、強烈な存在感を放つことだろう。外壁のLEDは「世界最大」の58万平方フィート(約5.4万m2)で、プログラミング可能なLEDパネルを縫い合わせたような形状となっている。内側にはハイビジョンテレビの100倍以上もの「世界最高の解像度」を誇る16万平方フィート(約1.5万m2)のLEDスクリーンが設置される。
LEDの重量に耐えるため、球形の屋根には長さ200フィート(約61m)、重さ100トンのトラスを32本使用し、その平衡を保つことで支柱を使わずに支える構造となっている。同等の建造物は存在しない。
内部空間も高さ360フィート(約110m)x 幅516フィート(約157m)と広大で、多層式・扇型を採用した17500の固定席と2500の折り畳み式席が設置されている。舞台正面のフロアには席を置かず、立ち見にすることで更に観客を増やしたり、逆に舞台を引き出すことで演出をよりダイナミックにすることが可能なレイアウトとなっている。
アリーナ内壁のLEDスクリーンと舞台を一体化させた、イマーシブな(没入型の)演出を売りとする設計であると言える。
もちろん音響についても、そのコンセプト通りの世界初となる技術が導入される。