ゼロカーボン、Amazon One アリーナの新潮流はシアトルに

Climate Pledge Arena(Photo by Bruce Bennett/Getty Images)

昨今、日本のスタジアムやアリーナでも、飲食や物販での「完全キャッシュレス」化が進んできたが、CPAではその仕組みにAmazonが開発した手のひら認証による非接触型ID決済サービス「Amazon One」とレジ会計なし技術「Just Walk Out Technology」が導入されている。
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事前に手のひら情報とクレジットカード、携帯電話番号を登録しておけば、店舗入場時に手のひらをかざし、商品を取って、そのまま出口を出るだけで、瞬時に決済が行われる。プレーやステージの瞬間瞬間を見逃したくない観客の利便性はもちろん、販売の省力化やCO2排出量抑制もかなう仕組みだ。

AmazonはCPAでの実績を基に、シアトルはじめ全米各地のスタジアム・アリーナへのシステム導入を進めている。

もちろんスポーツ施設のみならず、Amazon Goなどの実店舗や子会社のホールフーズ・マーケットでも稼働させており、先月には2000超の店舗を展開する米ベーカリーカフェ大手のパネラ・ブレッドとの提携を発表したばかり。更なる市場の掌握を狙う、巧みな戦略が垣間見られる。
(筆者撮影)

(筆者撮影)

長年の悲願「NBA誘致」も視野

現在CPAを本拠地とするプロスポーツチームは前述の通り、2021年に誕生したNHLのシアトル・クラーケンとWNBAのシアトル・ストームだが、OVGはNBAに対して、新たなフランチャイズの創設とチームの誘致を強く働きかけている。
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シアトルには「スーパーソニックス」という強豪チームが1967年から存在していたが、オーナーが代わり、2008年にオクラホマシティに訴訟騒動の末に移転した。以来、長く地元はNBAチームの再興を期待し続けてきた。

NBAのエクスパンション(リーグが参加チーム数を増やすこと)については、ここ数年でも囁かれてきたことで、シアトルはラスベガスとともに有力な候補地と言われてきた。NBAコミッショナーのアダム・シルバー氏も、最近は議論していないものの、数年後には協議活発化の可能性があると2月にコメントしている。

実現すれば、CPAの稼働率は更に高まる。OVGはNBA誘致に必要な設備を、建設予算に5千万ドルを上乗せして完成させた。巨額投資が花開く日はそう遠くないようにも思える。

AmazonとOVGのビジネス面での思惑は、必ずしも日本で参考になるものではないが、新設されるアリーナに「ゼロ・カーボン」「サステナビリティ」が求められることは、紛れもなく世界的な時代の趨勢である。そして、緻密な戦略とメッセージ無くしては、あっという間に閑古鳥鳴く施設となることであろう。

連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点

文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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