ゼロカーボン、Amazon One アリーナの新潮流はシアトルに

Climate Pledge Arena(Photo by Bruce Bennett/Getty Images)

世界一サステナブルなアリーナへ

施設はオール電化で、前述のように保存された屋根に配置された太陽光パネルからの電力と、リニューアブル(再生可能エネルギー)電源しか使わないため、カーボン・ゼロ。そして、全てのイベントにおいて、取り組みを徹底したうえで削減しきれない二酸化炭素の排出量を計測し、カーボンクレジットを購入してオフセットしている。
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こうした取り組みによってCPAは、世界初の「Zero Carbon Certification」(International Living Future Institute ゼロ カーボン認証)アリーナとなった。

加えて、イベント開催時の飲食などによる「廃棄物もゼロ」を目指し、コンポスト処理システムを導入。廃棄物の分別および圧縮施設も設置されている。

水の保全にも取り組んでいる。雨水を採取して利用する「Rain to Link」方式により、水の利用や雨水の流出を軽減し、ホッケー用の氷もNHL会場の中で「最もグリーンな氷」とされている。ちなみに氷上を整える大型のザンボーニももちろんEV車両だ。
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更には、アリーナで消費される食材の75%がシアトル市やワシントン州ローカル産のものに限定されている。環境のみならず、地元一次産業への配慮もなされている。

メッセージの発信も徹底的

先日CPAを視察した際、先ず驚かされたのは、メインコンコースに設けられた、その隅々にまで植物が配された「Living Wall」と呼ばれる壁だ。

Climate Pledge Arena「Living Wall」にて(写真左:筆者)

Climate Pledge Arena「Living Wall」にて(写真左:筆者)


OVGとNHLシアトル・クラーケンで働くワシントン州立大学での教え子たちによると、筆者のみならず、来場者のほとんどがこの前で写真撮影するという。

「サステナブル」「ゼロ・カーボン」のメッセージが来場者・関係者に強く伝わることが徹底されていることも、特筆すべき点だと言える。

ちなみに飲食で使用するハーブも館内で育てられているそうだ。

ショーケースとしても奏功

Amazonが、3~4億ドルとも見られるアリーナのネーミング・ライツ(命名権)を購入しながら、地元企業としてゼロ・カーボンを啓蒙するために慈善事業的な関与をしているだけかと言えば、実はそれだけではない。
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文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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