要因は、メタバース空間の構築を請け負う代理店の価格設定が高く、長時間と労力も要し、利用者の増加も他国に比べて高額な通信料金のままでは見込めないため、費用対効果が見合わないとみられていることだと考えられる。
では、海外ではどのような形で、メタバースを活用したビジネスが展開されているのか? また、そうしたメタバースビジネスの構築に力を発揮しているイスラエル企業についても、探究してみたい。
高級ブランドリテールの成功が契機
メタバースをいち早く事業に活用し、省力化と収益拡大に成功したのは、高額商品を販売するアパレルと化粧品メーカーである。アルマーニやランコムといったブランドは、従来は発信拠点とするパリやミラノなど大都市の一等地に複数の実店舗を構え、内装から販売員の服装まで、そのデザインをシーズンごとに更新し続けるべく、巨額の経費を投じてきた。
コロナ禍で店舗の閉鎖や削減を余儀なくされたこうした企業が、従来の二次元のECサイトのインパクトを超える高精細な3D店舗をタイミングよくサイバー空間でオープンでき、セールス・エージェントがアバターを介して接客できる、メタバース店舗の導入に舵を切った。
主要都市の旗艦店を今まで以上に豪奢かつデザイン性に富んだものにし、そのレプリカ・メタバース店舗を構築。個人顧客対応の仕組みを導入することで、母国市場だけでなく世界の顧客に向けて、リアルタイムで、それぞれの顧客の嗜好に合わせた、試着やメイクのお試し体験をオファーできるようにした。資生堂の国際展開ブランドであるNARSのメタバース・ストアも好事例に挙げられそうだ。
こういったブランドの先進的な取り組みは、売り上げを維持できたばかりか、期待以上の増収を果たした。