また、商品の透明性に関する懸念と同様に、回答者の30%以上が、中国企業がTemuの親会社であること、およびマーケットプレイスの商品が中国産であることに懸念があると回答しています。
シカゴ国際問題評議会によると、2022年のアメリカ人の中国観は100点満点中32点と40年ぶりに過去最低を記録するなど、中国とアメリカの関係悪化に伴い、アメリカ人の中国に対するネガティブな感情はますます高まっています。
そのため、Temuの中国とのつながりから、米国消費者が同プラットフォームの利用を躊躇するのは無理もないのです。
図5. Temuで商品を購入するか迷っている、または購入しないと答えた回答者が考える懸念事項(回答者の割合)
(図内の訳、コメント「Temuで商品を購入しないと回答した消費者の約3分の1がその理由として、商品の原産地や生産工程に関する情報不足に対する懸念を挙げている」 選択肢、左から「商品の生産工程に関する情報不足」「商品の原産国の情報不足」「中国製品であること」「親会社が中国であること」「Temuのことをよく分かっていない」「データのプライバシー」「配送時間」「その他」「回答なし」)
対象:Temuで商品を購入するか迷っている、または購入しないと回答した米国消費者73名(2023年2月調査) 出典 Coresight Research
WHAT WE THINK
Temuは米国消費者の間で急速に認知度が高まっており、Coresight Researchの調査でも、同マーケットプレイスの提供する商品への大きな需要があることが確認されています。しかし、Temuはビジネスモデルの収益性など様々な問題に直面しており、PDD Holdingsが現在のマーケティング戦略を今後も続けるかどうかは未知数です。また、今回の調査結果から、生産の透明性やTemuと中国との関係に対する消費者の懸念も見過ごせない課題です。Temuがこれらの懸念を払拭するには限界があるものの、コミュニケーションと透明性を高め、米国企業との提携を進めることで、米国消費者からの信頼を得ることができる可能性があります。
Temuは、成長著しいドルショップやオフプライスチェーンから、より成長性の高い食料品ディスカウントショップ、Sheinのような低価格の商品を提供するオンラインプレイヤーまで、米国小売市場におけるディスカウントエコシステムへの新規参入企業です。短期的には、同社を含むこのエコシステムは、高インフレと経済の不確実性による追い風を受けることになると思われます。
また、これらの追い風に加え、ミレニアル世代の世帯形成、高齢化社会、小売からサービス業への裁量支出の転換といった長期的な人口動態や社会の変化が、ディスカウント需要を支えていくものと思われます。
ブランドや小売企業にとっての意味合い
Temuの人気は、米国消費者の間で低価格の商品をワンストップで購入したいという需要があることを示しています。ブランド、特に国際的なブランドは、チャネルを増やし、米国でより多くの消費者にリーチするために、Temuとの提携を検討する可能性があります。しかし、米国消費者間のTemuの評判、特にそれがよりネガティブなものになった場合の可能性を含め、慎重に考慮する必要があるでしょう。
※この記事は、2023年3月にリリースされたRxR Innovation Initiativeからの転載です。