しかしそれがまさに要点だ。企業は影響が出るのを待つだけではない。パソコンが発明されてから普及するまでの20年の間に、企業はそれまで考えられなかったような応用を考え出し、それが多くの新しい雇用を生み出した。例えば、インターネットとワープロによって多くの事務員がいなくなった一方で、Federal Express(フェデラル・エクスプレス)などのサービスは新しいテクノロジーを使って荷物の集荷から配達までを追跡するなど、1970年代には存在しなかった新しいサービスを提供し、多くの人を雇用し続けている。
これはほんの一例だ。何百年も前にさかのぼると同じパターンが繰り返されている。18世紀後半に蒸気で動く紡績機が手織り職人から職を奪ったとき、失業が広がるのではないかという大きな不安があった。人々は脅威となる「ロボット」を解体しようとラッダイトというグループを形成した。しかし彼らは変化を止めることはできなかった。19世紀初頭までに英国の繊維生産量は50倍に増え、機械が発明される前より多くの人が雇用された。
発明の波は毎回、大量失業に対する同様の恐怖を生み出す。しかし、産業革命が経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが「創造的破壊」と呼んだこのプロセスを開始してから約300年以上もの間、先進経済は平均して働きたい人の約95パーセントを雇用してきた。もし技術革新がかつて懸念され、そして今日も懸念されているような永続的な失業を引き起こすのであれば、雇用率は技術革新の波が来るたびに低下したことだろう。
歴史に照らすと、AIの応用は破壊するのと同じくらい、あるいはそれ以上の雇用を生み出すと思われる。パソコン、インターネット、紡績機などのように、これらを活用した新しい仕事のすべてが高度な学位を必要とするわけではない。 これまでにも見られたこのプロセスが今後数年で展開される一方で、AIはより洗練されていくだろう。新しい仕事が古い仕事に取って代わることで多くの混乱が起こるかもしれない。差し当たって、テクノロジーは乗っ取ろうという気を起こすのに必要な人間の感覚を獲得することはないだろう。良くも悪くも、人間が監督し続ける。今回は状況が異なるかもしれないが、以前にも同じようなことを言った人がいた。そして、いつも間違っていた。
(forbes.com 原文)