キャリア

2023.04.07

AIが溢れる未来、私たちのリタイア時期は遅くなる

農業機械(Getty Images)

つい先ごろ『USニューズ&ワールド・レポート』の退職コラムニストのロドニー・ブルックスが、退職年齢の引き上げが「あなたにとって」何を意味するかについての記事を書いた。定年退職を間近に控えた多くの人たちにとって、このテーマが重要であることは間違いない。しかし、以下にお話しする予測は、もうすぐ退職を迎える人たちにとっては、あまり意味がないだろう。

ブルックスのコラムのことが心をよぎったのは、ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたChatGPT(チャットジーピーティー)の生みの親であるサム・アルトマンのプロフィールを読んでいたときだ。そのプロフィールの中でアルトマンは、米国における所得保障の支持を表明していた。彼が実現させたような目覚ましい進歩が、あらゆる仕事を消し去ってしまうと信じているからだ。人工知能が無数の収入源を圧倒的に破壊するという点ではアルトマンは確かに正しいが、だからこそ、将来的な収入保障の必要性については間違っている。

なぜそうなのかを理解するためには、機械の時代における労働の進化を考慮することが重要だ。仕事の破壊についてばかり話されてきたが、米国では失業者が食べ物に困るほどの状況にはなっていない。人類はその歴史のほとんどの期間を農民として働いてきたが、トラクターや過去の人間の努力を機械化したものが、ほぼすべての生きている人間が行っていた仕事を破壊してしまった。これは貧困を引き起こすものだっただろうか? 答えはノーだ。

単純な真実は、仕事の破壊こそが経済成長の強力なきっかけということだ。なぜかというと、経済成長には投資が先行するものであり、投資とはより少ない労働力でより多くの商品やサービスを生み出すことだからだ。逆説的な現実ではあるが、仕事の機会が最も多いのは、仕事が最も急速に破壊されている場所なのだ。そのとおり。何度も繰り返して言おう。仕事の創出は仕事の破壊から生まれる。新しい仕事は、古い仕事の形態を消し去る投資から生まれるのだ。

つまり、投資によって生まれる進歩が、新しい働き方を発掘してくれるのだ。インターネットもまた、トラクターが農業におよぼした影響と同様に、私たちの働き方に大きな影響を与えた。インターネットが登場する前に行われていた多くの苦労がインターネットによって取り除かれた。
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翻訳=酒匂寛

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