東京商工リサーチによると2022年の運送業の倒産件数は248件にのぼり、2015年以来の200件超えを記録した。直近2023年2月においても燃料費が高止まりしている影響で倒産件数が25件に急増。前年同月と比較して2.2倍の件数だという。
この4月からは法改正により中小企業に残業代の割増率引き上げが決まっており、コスト上昇が避けられない。零細企業にとって厳しい状況だ。深刻な人手不足により、荷物の安定受給が危ぶまれている「物流クライシス」に拍車がかかる。運送業だけでなく、製造業や小売業が打撃を受ける可能性が高まってきた。
後続車無人隊列走行、共同配送──
この「物流クライシス」を避けて通るには「業務効率化」と「労働環境の改善」が必要だといわれている。国を中心に積極的に議論が進められているのが、業務効率化の進め方だ。
具体的にいくつか例をあげよう。
ひとつは自動運転技術だ。「後続車無人隊列走行」は実証実験がすでに成功している。先頭車両のドライバー1人のみで、数台のトラックを連ねて高速道路で走行できる技術だ。
もうひとつの例として、共同配送への取り組みも挙げられる。
複数社合同の積み合わせ便で輸送することにより、長距離輸送において帰り道が空車回送になってしまう無駄を回避したり、積載できる容量の空きを有効に活用できたりする。
いずれもドライバー一人当たりが運べる輸送量を増やし、「効率化」する施策である。
それらの施策をスムーズに進めるため、物流のビッグデータ化が進められている。トラック予約受付システムのシェアNo1を誇る「MOVO Berth」を提供するHacobu佐々木代表は、その裏側の狙いをこう話した。
「自動運転の実現化は2030年、高速道路における自動運転の実用化は2035年あたりになるでしょう。その頃までに物流をビッグデータ化し、配送伝票の受け渡し等もデータ上でスムーズに行えるようにしたいと考えています。そのためにも、プラットフォームをたくさんの人に利用してもらう必要があります」
物流業界はこれまで、属人化した業務が多い傾向にあった。業務標準化を進めるうえでプラットフォームの活用を推進。あわせて蓄積されていくデータを業界の改善に役立てようということだ。先を見据えた取り組みに期待が高まる。