経営・戦略

2023.04.06 10:00

メタバースは超高齢化日本で適材適所を実現する|人的資本経営トーク#1

大柏 真佑実

強いバイアスがある日本こそ、メタバースの効果は大きい

谷本:それは大きいですね。でも例えばスポーツなど、物理的でメタバース空間では実現できないケースもあるのではないでしょうか。

酒井:できる、できる! 全然できますよ。メタバース空間には全く見たこともないスポーツが出てくるわけで、ものすごく面白いことになるはずです。これが何に良い効果をもたらすかというと、本質的な高齢化社会への対策になります。

というのも、介護になりやすいタイミングは基本的に、仕事を失った後なんです。本当の介護予防は、社会との接点を維持すること。もっと言うと仕事を続けることです。孤独は、喫煙や肥満よりずっと健康に悪いことが分かっています。仕事上の関係性は、学生時代のようにはいきませんが、時にはふと思い出してコンタクトを取ったりと、社会とのつながりは保たれるわけです。これが高齢者の孤独を防ぎ、介護予防になります。

堀尾:なるほど。だからこそ年齢差別を撤廃して、柔軟な採用や起用が必要になるわけですね。

酒井:年齢差別は本能的なので、おそらく教育による撤廃は無理です。だから仕組みが大事です。アマゾンのジェフ・ベゾスがよく話していることですが、仕組みで解決しないとインパクトがないんですよね。メタバース空間で暮らす未来がくれば、75歳の人がForbes JAPANの新入社員に応募してくることもあるわけです。その人がいいなと思えば採用するだろうし、バイアスはかからない。それが当たり前になる未来が、超高齢化社会を乗り超えるために本質的に必要なことだと思います。

堀尾:今後、ビジネスケアラーが増えていくと、介護・育児の両立や男性育休、働き方改革などは当たり前の焦点だということですね。一方、そこを補うためには、女性の活躍もとても重要だと思います。酒井さんはどうお考えですか。

酒井:日本は、女性差別が根強い国の一つですよね。でも実はそれが日本社会の大きな伸びしろだと思っています。本当はもっと活躍できるのに、できていない女性がたくさんいるということですから。より多くの女性が活躍できる社会にしないと、社会全体が沈んでしまいます。これは絶対に取り組まなければいけない問題です。

同時に、年齢差別と同様、女性差別を本当に無くすことはできません。アンコンシャス・バイアスの中にそういうものがあると理解して、自分なりに眼鏡をかけて何とかしようとしても、本質的にはかなり難しい部分もあると思います。さっき申し上げた通り、メタバースのような未来では、性別も分からないわけです。

性別も年齢も分からない空間で、相手にバイアスをかけられない仕組みが実装された時、それは一気に解決するはずです。高齢化が止まらない日本にとって、大きな希望になる部分です。日本社会では古いものを大切にするような強いバイアスがあるからこそ、メタバースのインパクトは潜在的に非常に大きいと思っています。


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文=釘崎彩子

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