英ハロッズの飲食事業、「目的地化」戦略で急回復

THE HARRODS TEA ROOMS(C)Harrods

英国の「Harrods(ハロッズ)」と聞いて、まずレストランを思い浮かべる人はあまりいないだろう。ロンドンのナイツブリッジにあるハロッズは、3000以上のブランドの店舗が入居する世界有数の高級百貨店だ。

だが、店内の飲食店26店舗の利用者数は大幅に増加しており、昨年は新型コロナウイルスのパンデミックが発生する前の2019年と比べ、取引件数が44%、取引額が47%増えている。

百貨店全体の業績も昨年1月期までに回復しており、前年は6830万ポンド(約110億円、税引き前)の損失を出したものの、5100万ポンドの利益を計上している。

ハロッズの飲食事業部門のディレクター、アシュリー・サクストンによると、同部門はいまや、全体の収益に大きな影響をおよぼす事業の要になっている。

「私たちの調査の結果、来店回数が多いのは、店内のレストランを利用している顧客であることがわかりました。店内での滞在時間、支出額はどちらも、(飲食店を利用しない人の)2倍になっています」

特に欠かせない要素となっているのは、(ロンドンの)ピカデリーにある老舗百貨店、フォートナム&メイソンの伝統的なアフタヌーンティーと同様、ハロッズ・ブランドの「DNAの一部」となっているザ・ハロッズ・ティー・ルームズだという。

ハロッズが顧客向けに発行しているリワードカードのデータによれば、店内のレストランを利用しているカード所有者は、パンデミック発生前には29%だった一方、現在では80%に増加。コンバージョン率(買い物で来店し、店内の飲食店を利用する人などの割合)は、8%から20%に増えている。

飲食店を来店の「目的」に

ハロッズが取り入れてきたのは、店内のレストランを顧客にとっての「目的地」にする戦略だ。それにより、店内の飲食店は買い物の途中でお腹を満たしたり、休憩したりするためだけの場ではなくなり、食事のためにハロッズを訪れる人が増えている。
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編集=木内涼子

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