2023.03.30 15:00

悲劇の場所を訪れるダークツーリズム、その意外な人気

同じように、イタリアのヴェネツィアで最も多くの観光客を集める建物の一つであるサンタ・マリア・デッラ・サルーテ(救済の聖母マリア)聖堂もまた、1631年にヴェネツィアを襲ったペストから街を守る目的で建設された。

ヴェネツィアの聖堂とウィーンのペスト記念柱は、パンデミックの犠牲者を追悼する目的で建てられた、世界に多数ある記念建造物のほんの一例にすぎない。

観光旅行を形づくるのは、大きな悲劇だけではない。人は、しばしば奇抜で独特な慣習をもつ場所にも惹かれる。こうした場所の多くは、外国人旅行者にとっては少し不気味に感じられる。

日本の徳島県にある名頃(なごろ)という小集落は過疎化が進んでおり、人口はわずか20人強しかおらず、高齢化が進んでいる。この集落は「かかしの里」とも呼ばれており、今では350体のかかしが村内のベンチに座り、机に向かい、店に立っている。村人をモデルにしたかかしもあるという。

同じように、メキシコのソチミルコはアステカの人々が建設した運河で知られており、ユネスコ世界遺産にも登録されているが、一方で「人形の島」を一目見ようと船頭を雇う観光客も多い。この小さな島では、人形やそのパーツがすべての木々に吊り下げられている。島には、かつて1人の男性(すでに故人)が暮らしていて、近くで少女の遺体が発見されて以来、彼は悪霊を退散させるために人形を飾り続けたのだ。

フィリピンのサガダでは、村ぐるみの慣習が観光の目玉になっている。村を訪れた観光客は、吊るされた棺に感嘆する。何世紀も続くこの伝統は、故人が生前つくった棺に遺体を納め、村にある崖に吊るして来世の幸福を願うというものだ。

もちろん、最古の災害現場の一つであるイタリアのポンペイは、最も有名な観光地の一つだ。この街で火山が噴火したのは紀元79年のことだが、今でも観光客が絶えない。

ポンペイが人々を魅了する理由の一つは、住民たちの最期の瞬間が火山灰に包まれて、そのまま保存されていることだ。考古学者たちは、噴火の瞬間に人々がしていたことを完璧な鋳型から復元することができる。歴史的な出来事が起こった過去を訪れるのに、これほどインパクトの強い方法はそうないだろう。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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